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2012/04/20

高橋克彦 『1999年対談集』はすごい(1)

おれのろくでもない読書履歴を開陳すると、今では入手困難になっている本、それも普通の人にはあまり意味のない、くだらない本ばかりになってしまう。
それでもめげずに、ご同好の諸氏諸嬢に向けて、紹介していきたい。




「ノストラダムスの大予言」がベストセラーになったおかげで、ノストラダムス本や人類滅亡本やブームに便乗した宗教団体の勧誘本だとか、山ほど出版された。
今回、紹介するのはその中の一冊だ。
高橋克彦 『1999年対談集』、おれの手元にあるのは1994年の講談社文庫だ。親本は1990年に小学館から出版されている。
この本は、かつて小学館から出ていた『ワンダーライフ』で連載されていた高橋克彦の対談をまとめたものだ。
『ワ ンダーライフ』は『ムー』のライバルというべきオカルト雑誌。知る人ぞ知る怪雑誌だった。1988年に創刊され、1992年に休刊した。怪しげなトンデモ さんが登場する雑誌として一部で有名だった。ちなみに同時期、学研のローティーン向け『マヤ』、麻原彰晃がたびたび紹介されていた「トワイライトゾーン」 などもあった。
『1999年対談集』はトンデモさんオールスターズが群れ集う豪華な本である。
オカルト好きな作家高橋克彦がホスト。
ゲストは矢追純一、横尾忠則(2回)、五島勉、小島露観(万師露観)、あすかあきお。
本には収録されなかったが、UFO本でおなじみ、たま出版の韮澤潤一郎や糸井重里も登場した。
どうですか。豪華でしょ。
高橋克彦の意向により、一連の対談では「1999年人類滅亡」を意識した内容が語られる。1988年〜2000年あたりに、「来るべき1999年」についてオカルト界の巨魁が語っているところがミソ。で、それを2012年マヤ予言による滅亡の年に取り上げるわけだ。
対談の内容を少しずつ紹介していく。
なお、この本はのちに「見た!世紀末ー対談集」と改題された。

見た!世紀末―対談集 (講談社文庫)

まず、UFOブーム、ユリ・ゲラーブームの仕掛け人、矢追純一。
まず、UFO好きな高橋克彦は、UFOは黒船、矢追純一は吉田松陰だと持ち上げる。
矢追さんは日本人がみんな、前方の一点を見てまっすぐ歩いているので、「みんなに空を見上げてほしい」という願いをこめてUFO番組を作ったという。
矢追さんはさらに、人類はあと10年ほどでカタストロフィが来るんじゃないかと語る。2000年前後、おそくとも2030年頃までに日本は2千万〜3千万人までに人口を減らしているんではないだろうかと語る。カタストロフィを前提に生き方を変えようと主張する。

続いての対談は、横尾忠則さん。
横尾さんのかたるスピリチュアルな体験はなんか楽しい。
冒頭で横尾さんは、1987年から1989年まで宇宙人とコンタクトしていたと告白する。ある日の昼、ホテルのベッドでうつぶせに寝ていると、からだが30cmほど浮き上がった。次の瞬間、頭のなかに宇宙人3人が来るヴィジョンが浮かんだ。
宇 宙人は「あなたとコンタクトします」と言って、横尾さんの首のうしろに器具を入れた。それは受信器だった。あとでわかったのは、アストラル体に対する手術 だったということ。(人間は肉体、生命を担うエーテル体、精神力を担うアストラル体からできているのだという)しかも、横尾さんとのコンタクトには女性の パートナーがいたそうだ。横尾さん専門のラジオのような役割、チャネラーなのだ。横尾さんと女性は5万年前にコンタクトしてくる「声」の主から分離した魂 なのだという。
声の主は、「アーリーオーン」と呼ばれる大天使ミカエルの力の顕現の一部を持つ天使である。天使と宇宙人が共同で横尾さんにコンタクトしてきたのだ。
この女性のパートナーはかつてNifty-Serveでフォーラムを開設していて、アリオンの「神霊メッセージ」と称する詩のようなメッセージを流していた。口の悪い人は「宇宙イタコ」などと揶揄していた。ウェブサイトも開設していたが2003年に閉鎖されている。
とにかく偉い存在らしい。うん。…ミカエルの生まれ変わり、GLAの高橋佳子や、宇宙最高級神霊エル・カンターレの大川隆法とどっちが偉いんだろう。
横 尾さんはUFOに乗って南極の地下やチベットの地下に行った。横尾さんは夢だと思っていたが、アストラル体がUFOに乗ったのだという。また、UFOのな かで37歳の姿をした三島由紀夫に会ったという。ほかにも会う機会があってUFO以外で会ったときは軍服を着ていることもあるという。
「あと10年で人類が滅亡する」説に対して、横尾さんは、
「破滅の予言を信じることは危険です。その時期を想念によって早めることになりかねないからです」と返答する。天使からそう伝えられたそうだ。
コンタクトできる条件として、天使と宇宙人は5つ挙げている。
純粋、無邪気、素直(正直)、謙虚、全知全能なる存在への畏敬の念。

アストラル体で体験している、というのと夢や妄想は何か違うのか違わないのか。

3番目の対談相手は「ノストラダムスの大予言」を書いた五島勉。つまり1999年にまつわる状況を作り出したともいえる人だ。
おそろしいことにこの対談集のなかでは、いちばんおとなしく、マトモに思える。
話していることは「ノストラダムスの大予言」シリーズのなかで主張してきたことの繰り返しである。
五島さんは対談で述べる。
「ノストラダムスの予言が的中しなくたって、世の中が良い方向に行けば良い。そのうえで『ほら、昔、ノストラダムスの予言とか馬鹿なことを言ってたやつがいたな。全然当たらなかったじゃないか』っていうふうになった方がずっといいんですよ。『当たりませんでした。ノストラダムスと私の責任です』で終わりになる」
五島勉さんの思いはそのとおりになった。



後半は、ぶっ飛んだ話ばかりの小島露観(万師露観)、あすかあきおについて書く。


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