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2020/07/24

『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』は旅立たず。

時に西暦2020年2月、新作アニメ映画『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』と、TVシリーズ『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』を再編集して新作カットを加えた映画『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』制作と公開がアナウンスされた。
この頃は、新型肺炎の感染拡大によって世界が、そしてアニメ界も大きな影響を受けるとは、誰も思わなかった。

『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』公開は、「ネクストウィンター」だという。
映画『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』は「今秋」 と発表されている。詳細な日時はまだ告知されていない。

「宇宙戦艦ヤマト:次回作「2205」は「短期決戦」 公開は「ネクストウィンター」 福井晴敏が明かす」

2020年2月3日
https://mantan-web.jp/article/20200203dog00m200079000c.html


「宇宙戦艦ヤマト:次回作「2205」は「短期決戦」 公開は「ネクストウィンター」 福井晴敏が明かす」
説明を追加



これ以降、製作者サイドからは作品についてのインフォメーションは出ていない。

公式ウェブサイトも(2020年7月末時点では)まだオープンしていなくて、ほかのプロモーションも行われていない。


制作会社が運営する『宇宙戦艦ヤマト2202』の公式サイトにも新しい情報は出ていない。
約半年、新作の情報は出ていない。

映画興行や演劇、音楽のライブイベントについて今年の秋以降、来年あたりまでの様々な情報が発表されている。
中止、延期、ライブからネット配信への変更などの告知である。
今年最大の話題作
動向を気にしているお客さんのことを考えれば当然するべきことだ。

しかし、ふたつの新しい『ヤマト』については情報がない。
その理由を考えてみよう。
あくまで仮説であり妄説なのだということはお断りしておく。




『ヤマト』新作の情報がない理由


1)ヤマトファンを焦らす、高度な戦略かもしれない

まず考えられるのは、宣伝活動として、意識的に仕掛けているのかもしれないということ。
発表する情報を絞りつつ〈驚くような展開〉があることを匂わせて期待感を煽る「ティーザー」を仕掛けているのかもしれない。
『スター・ウォーズ』や『アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー』『アベンジャーズ:エンドゲーム』はじめ、ハリウッドのブロックバスターがよく行う手段だ。
それかもしれない。
例えば、『アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー』の公開前。監督のルッソ兄弟は、「衝撃に備えてください」という言葉をソーシャルメディアに流し、ファンにある種の「覚悟」を迫った。マスメディアはそれを取り上げて、映画への期待、それ以上に不安が世界のファンを覆った。
この焦らす手法を採用し、宣伝しているのかもしれない。
だとしても、「匂わせ」「じらし」の何らかのインフォメーションは出すべきである。
この地雷手法に業を煮やしたのか、一部のヤマトファンが、ソーシャルメディアで宣伝活動をしているものの、拡散も炎上もないのが現状だ。
『宇宙戦艦ヤマト2199』で拡大した『ヤマト』のマーケットだが、『宇宙戦艦ヤマト2202』の失敗で、マーケットは縮小してしまった。


2)人手不足・カネ不足で情報発信ができない可能性

『ヤマト』の制作会社(「ボイジャーエンターテインメント」だったか)が人手不足、社員の能力が低いなどの理由で、作品に関する情報の更新に手が回らない。
なので、情報発信もままならないという可能性がある。
カネがなくて、宣伝を委託しているPR会社もしくは広告代理店、ウェブ制作会社に発注ができない。
宣伝を委託する外部会社と揉めていて情報の更新が止まっている。
たとえば、不払いが原因で。
『ヤマト』は旧作時代から金銭トラブルが多かった。養子となって権利を引き継いだ人も、その悪しき習慣をも継承したのだろうか。

カネを使った宣伝ができないとしても、公式ウェブサイト更新やSNSを使った情報発信はできると思うけれども、していない。
ネットを使った宣伝施策に懐疑的なのかもしれない。
ボイジャーエンターテインメント株式会社のあまりにも味気ない企業ウェブサイトを見ると、そんな気もする。
「製作委員会」には広告代理店やら他の企業のマーケティング専門家などが参加していないんだろうか。

3)制作延期もしくは制作中止になった可能性。

『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』と『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』制作中止、または延期が検討されているか、すでに決定している。

その可能性は高いと思われる。

秋もしくは冬の公開が決まっていたとすれば、アニメ制作が要する期間から考えると、かなり制作が進行していたはずである。
制作が中断したら、制作再開後の見通しや公開スケジュールの見通しなど、何らかのインフォメーションがあってもいいと思うが、2020年7月末時点でそんなものは公には出ていない。

1月中旬に始まった新型環状肺炎ウイルスの感染拡大。
日本もその例外ではありえず、アニメ業界も大きな影響が出た。海外依存度の高いアニメ制作、声優が集まることが濃厚接触となるアフレコなどがストップし、1月放映のTVアニメの放送休止および中止や延期が続出した。

当然、4月・7月・10月放映開始予定のアニメ制作にも大きな影響が出ている。

2−5月の「自粛」により、アニメの製作時期がずれ込んで、おもにテレビ放映の作品の放映/配信/公開時期が変更された。

新型コロナウイルス情勢・対応

アニメ制作の時期のズレによって、作品によってはアニメーターを確保できない作品も出るだろう。1月・4月に放映するはずだった作品の制作が遅延した影響で、夏、秋、冬、2021年以降の作品もスタッフの確保、スケジュールづくりに苦労している。
では、『ヤマト』はどうなのか。
インフォメーションがないので、楽しみにしている人は不安だろうと思う。

新作『ヤマト』がどこまで制作が進んでいるか、新型コロナウイルスの影響をどの程度受けているのか、さっぱりわからない。

4)「ヤマトマーケット」縮小により、制作中止の可能性。

この作品の制作中止と予想するもう一つの理由は、『宇宙戦艦ヤマト2202』が引き起こしたヤマトファンの大量離脱の影響である。
『宇宙戦艦ヤマト2199』のファンを引き継げず、ファンが離れた。

『宇宙戦艦ヤマト2202』は「あさって」に行ってしまった作品である。

ヘンな紋様がついた戦艦やダニのようなパワードスーツやヤマト型でセンス最悪の「銀河」とかメカの描写に時間が使われてストーリがそのぶん雑に削り取られてしまった。
人物の描写は、メカ描写に時間が取られたぶん、少なくなった。
少なくなった時間は、新登場登場人物重視に時間を使われて、メインキャラクターの描写が著しく減少した。古代も森雪も真田さんもモブみたいに目立たなくなった。

クライマックスがすごい。
というか、ひどい。

ベースとなった『さらば宇宙戦艦ヤマト』の超巨大戦艦への特攻・散華エンディングを、〈高次元世界〉だかに突入というスピリチュアルな場面に書き換えるという、ヤマトファンが想像もしなかった地平に到達した。

『宇宙戦艦ヤマト』旧シリーズは『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』が43億円の興行収入。これが興行のピークで、続篇は動員が減っていった。『宇宙戦艦ヤマト 完結編』の興行収入は17.2億円。
『完結編』から26年後の2009年に公開された『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』は興業的に惨敗を喫して興行収入は3.9億円。

『宇宙戦艦ヤマト2199』は
「イベント上映」「パッケージソフト(Blu-ray)「TV放送」「配信」と順次展開してトータルでは100億円を超える経済効果を生み出した。
旧シリーズで離脱したファンが戻った。

しかし、『宇宙戦艦ヤマト2202』では離れた。
DVD/Blu-rayの売上は『2199』から半減近くとなり、プラモデルの数はとても少ない。
『ヤマト』にカネを使ってくれるお客さんが減ったのだ。
普通、こういった場合にはマーケットリサーチをして、新作にGOサインは出さないと思うが、製作者たちはヤマトファンからまだ搾り取れると判断したようだ。
『宇宙戦艦ヤマト2202』『宇宙戦艦ヤマト2205』は新しいファンがほとんどいない、旧作からのヤマトファンの一部の人々に支えられる作品である。
何年かのちには、ファンがいなくなる、時限マーケットによって成り立つ作品だ。
コロナ禍の影響や、「製作委員会」参加企業が減った、なにより想定できる顧客=ヤマトファンの影響を鑑みての「制作中止」もあるのではと予想する。

とはいえ。
『宇宙戦艦ヤマト2205』がきちんと公開されたらいいですね。
続くのは『ヤマトよ永遠に』『完結編』『復活篇』のリブート、『復活篇第2部』なんですから。それまでヤマトファンが存命かどうか、わからないけれども。
『ヤマト・ビジネス』は新規顧客がいないので、既存客からふんだくるだけふんだくるビジネスなのだ。「『ヤマト』にカネを使うのは税金と同じ」などというファンがいるかぎり、ある程度儲けることができるんだろう。

ああ楽しみだな『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』。

2020/07/15

西崎義展と宇宙戦艦ヤマト Part1

西崎義展と宇宙戦艦ヤマトについて、色々なテキストや数々の発言から拾ってみる。
このページは、個人的な備忘録である。
予め、予告しておくが、文字量はバカみたいに多くなると思う。

西崎義展がどういう人であったかの一端を覗き見たいと思ったので、検索で西崎義展とヤマトについて書かれたテキストを集めてみた。それを「カットアップ」で再構成しようとお思っている。
カットアップは、フレーズをバラバラにして組み立てなおす、執筆や音楽制作で用いられる手法の一つである。





まずは、放送の2日前にラジオドラマ版「宇宙戦艦ヤマト」のシナリオ執筆を依頼された藤川桂介氏のおはなし。
ラジオドラマ版は、4時間に及ぶ生放送だった。

魔法のクスリ

○藤川桂介、西崎義展を語る

「宇宙戦艦ヤマト」の映画での大ヒットに目をつけて、ニッポン放送では、そのラジオ・ドラマを生放送しようという企画を持ち込んできました。
いつものことでしたが、話が決まってぼくに脚本の依頼があったのは、実に放送の二日前といった状態です。
かつてラジオ・ドラマを書いていたとはいっても、無茶苦茶な話です。
しかしこんな切羽詰まった状態で、あの膨大な話を、すぐにまとめられるのはぼくしかいません。結局引き受けざるを得ませんでした。

ストーリーの全容は熟知しているので、全体像をきめることは、そう難しいことではありませんでしたが、それでもいよいよ脚本を書く状態になったのは、午前二時近くになってしまっていました。
それまでさんざん打ち合わせをしてきているので、疲れも極限にきていました。
いよいよ執筆というところまできたところで、睡魔が襲い始めたのです。
「もう駄目だ」と思いました。
実はここへ入るとき、プロデューサーのN氏が、
「眠くなったら、これを飲んでください。おまじないです」
小粒の錠剤をひと粒渡してくれたんです。
ぼくはそれを、コップに注いだ水と一緒に置きました。
「怪しけなものではないのか?」
&そんな不安があって、それを呑むことに躊躇しました。しばらく睡魔と、白い錠剤とのにらめっこがつづきました。しかし原稿を書こうと思っても、ただ眠くなるだけです。ついにぼくは決心をして、その「おまじない」を飲み込んだのでした。

あーら不思議。それから数分も経たないうちに、睡魔からも解放されて、妙にうきうきとしてくるのです。もう午前三時は間近。ぼくは夢中で書き始めました。一気に書いて、ついに約束の午前八時には、原稿を持ってロビーへ下りて行ったのです。

それにしてもあの魔法の錠剤は何だったのでしょう。
一説では鬱病の薬だということでしたが??

藤川桂介 『アニメ・特撮ヒーロー誕生のとき ウルトラマン、宇宙戦艦ヤマトから六神合体ゴッドマーズまで』 ネスコ、1998年




宇宙戦艦ヤマトの堕落史6|宇宙戦艦ヤマト 復活篇

「宇宙戦艦ヤマト 復活篇」は、カルト映画になりそこねた映画である。

カルト映画足りうる条件は備えていたはずだ。

ひどい出来で、期待されたほどのヒットもしなかった「宇宙戦艦ヤマト 完結編」から26年を経て登場するという無意味さ。
旧作のタッチとも違う、アップデートしたつもりが時流に全く合わないキャラクターデザイン。
センスがまるで感じられないCGの使い方。
劇場アニメだというのに、80〜90年代の濫作期のアニメのように破綻した作画。
底が浅くてご都合主義のストーリー展開に、意味のない自己犠牲の特攻。

惜しい。

一人合点して勝手に特攻して華と散る人間が立て続けに登場するあたりは、「頭が悪い映画」として少し期待したのだがなあ。
全部中途半端で、「底抜け映画」になるという華々しい破綻はなくって、ごくありふれた「失敗した映画」で終わってしまった。






これは、今回の敵役SUSの生命体である。
「異種異根の生命体」と言っているのに、このていどのイマジネーションなのだ。
弾けていない。
まったくもって弾けていない。
しかもこの魔神のできそこないみたいなやつは、長々と「ストーリーの説明」をするためにでてきただけなのだ。

2020/07/14

ヤマト誕生期の熱気、そして堕落へ。 豊田有恒 「宇宙戦艦ヤマト」の真実

豊田有恒の新書『「宇宙戦艦ヤマト」の真実ーいかに誕生し、進化したか』を読んだ。



豊田有恒は、『宇宙戦艦ヤマト』放映当時、気鋭のSF作家として、また、古代史にも造詣が深い作家として人気があった。
ストーリー原案およびSF設定を受け持った立場からの視点で、本邦初の本格的宇宙アニメ、もしくは映像のスペースオペラ作品がどんなふうにできたかを描いている。

『ヤマト』の〈地球を救うために広大な宇宙を旅して帰還する〉というストーリーの骨格は、SF作家の大御所・ロバート・A・ハインラインの『地球脱出』と、ご存知『西遊記』を基にした。

豊田有恒は『ラジェンドラ6』という物語を考えた。

ラジェンドラは地球に攻め入り、自分たちが居住地とするべく、放射能で汚染した。ラジェンドラの生命体は放射線の環境下で生きるのだ。
惑星イスカンダルは地球に放射能除去装置を提供するという。
地球人たちは、小惑星に偽装した宇宙船『アステロイド6』で旅立つ。宇宙空間を一気に飛び越える「ワープ航法」を駆使してイスカンダルを目指す。
『ラジェンドラ6』は、海底に眠る戦艦大和を宇宙戦艦ヤマトに改造するという松本零士のアイデアを得て、『宇宙戦艦ヤマト』となった。
ラジェンドラの正体については驚くべき秘密があるのだが、それはアニメでは採用されず、石津嵐の小説『宇宙戦艦ヤマト』やTVシリーズを劇場版に編集した映画第1作の当初のバージョンに反映されている。
ラジェンドラは松本零士の参加を得てガミラス帝国となる。
豊田有恒は、松本零士を「おおよその原作者」と評し、裁判の判決が真実と異なることもあると書いている。

豊田有恒は『さらば宇宙戦艦ヤマト』以降、『宇宙戦艦ヤマト 完結編』までSF設定に関与し、重核子爆弾、地球に水をもたらした水の惑星アクエリアスなど、各エピソードのコアとなるアイデアを提供した。
ネーミングでは、歴史に想を得たものが多いと明かす。
例えば、星の名称。アレクサンダー大王から「イスカンダル」、中東の氷菓子から「シャルバート」などである。

スタッフの無理解で、アイデアがうまく活かされないことも多かった。
『さらば宇宙戦艦ヤマト』の白色彗星は、もともと「白色矮星」だった。白色矮星は寿命の尽きた恒星の最後の姿である。恐るべき重力を持ち、周囲の天体を破壊す呑み込んでいく。豊田有恒の出したアイデアは、白色矮星を武器とする星間航行種族が太陽系に攻めてくるというものだった。
知っての通り、白色彗星という、科学考証もへったくれもない、わけのわからないものに改変されてしまった。

豊田有恒はその戦犯を明示していない。しかし、アイデアキラーと思われる人物について極めて辛辣に書いている。

西崎義展である。

『ヤマト』の企画を成立させた稀有なプロデューサー。

人たらしの才能があり、相手を丸め込んで『ヤマト』の生み出すカネと権利ををほぼ独占して蕩尽した怪物。
クリエイティブな才能はないが、〈自分が創ったことにしたい〉という自己顕示欲が人の姿をとった存在。
運転手付きリンカーンコンチネンタルに乗り、豪華なクルーザーを買い、武器も買い、赤坂で豪遊し、何人も愛人を囲い、何百億ものカネを使い果たしたあげく覚醒剤に手を出して捕まり、服役した。




豊田有恒はこの本で『宇宙戦艦ヤマト』から『宇宙戦艦ヤマト 完結編』まで関わって設定を作ったことを語るが、作品については一切論評していない。
スタッフとして『ヤマト』を作った松本零士、宮川泰、藤川桂介、スタジオぬえ、出渕裕などの「同志」的な、さらには〈西崎義展被害者の会〉的なつながりを書いている。
出渕裕はSFファンとして豊田有恒とはかねてより交流があった。
豊田有恒は、出渕裕が『宇宙戦艦ヤマト2199』 を手がけるにあたり、松本零士に対して名前をクレジットできないことについて謝罪をしたことを明かしている。

豊田有恒のアイデアは今読んでも色褪せないおもしろさがある。

豊田有恒や松本零士が作ったアイデアに立ち返って、『宇宙戦艦ヤマト』リメイクしたら面白いんじゃないだろうか。
『さらば宇宙戦艦ヤマト』『宇宙戦艦ヤマト2』のリブート作品が作られたが、一部のファン以外は全く関心も示さずに地味に消えてしまった。
これを中止して、『宇宙戦艦ヤマト Naked』とでもいうべき、初期アイデアに基づいた古くて新しい『宇宙戦艦ヤマト』が観てみたい。



2017/03/15

宇宙戦艦ヤマトの堕落史0|墓碑銘

「宇宙戦艦ヤマト」から「宇宙戦艦ヤマト 復活篇」に至る歴史について語りたい。
西崎義展のプロデュースで作られた「ヤマト」について、個人的な見解をもとに変遷を辿っていこうと思う。

「宇宙戦艦ヤマト」の歴史とは、汚濁の歴史である。
「宇宙戦艦ヤマト」の歴史とは、失望の歴史である。

「ヤマト」を語ることとは、最初のTVシリーズにあった美点が失われ、無視され、汚されていった堕落の道筋を辿っていくことである。
製作者の意向で作品世界は書換えられ、設定は捨てられ、死者は蘇り、構築された作品世界は反故にされる。
「ヤマト」は、そんなことを繰返した。

「宇宙戦艦ヤマト 劇場版」公開当初、この映画は「愛」もしくは「宇宙愛」だとか「和」を描いたものだとか高尚そうに語っていた西崎義展は、大金をせしめてからというもの、本性を現した。
「赤坂のデスラー」と呼ばれ、赤坂で豪遊していたという。
儲けたお金でクルーザーを買い、銃火器を買って女を連れて海に乗り出した。覚醒剤を買ってキメたところを警察に捕まり、獄につながれた。
実写版『Space BattleShip ヤマト』の高額な映像化権料で買った船から海に落ちて不帰の客となり、養子・西崎彰司が権利を手に入れ、続篇に手を染めた。

『宇宙戦艦ヤマト』ファンは、最初の「宇宙戦艦ヤマト」の面影を追いかけて映画館に足を運ぶ、もしくはチャンネルを合わせては失望を味わうという繰り返しだった。
しかし、ファンとは汚濁も失望も呑み込んで、ファンであり続けた。





2012/04/24

松本零士のいない宇宙戦艦ヤマト2199

「宇宙戦艦ヤマト復活篇」、実写版「SpaceBattleship ヤマト」、そして「宇宙戦艦ヤマト2199」
そのいずれにも〈松本零士〉の名はクレジットされていない。

著作権を巡る裁判と和解を経て、松本零士は新作の「宇宙戦艦ヤマト」には一切関わらないということになったようだ。おそらくは松本零士もそれを強く望んで、クレジット表記を拒んだのではないかと推測する。
とはいえ、「宇宙戦艦ヤマト2199」では、松本零士のテイストがかろうじて残っている。デザインを継承し、それらをリファインしているのだから当然ではある。メカデザイン、一部の登場人物に松本テイストを感じる。
「宇宙戦艦ヤマト」第1TVシリーズは様々な人たちのアイデアの集積でできているが、ヴィジュアル面の設定をつくった松本零士のカラーが強く出るのは当然である。(設定・松本零士、クリーンナップ・スタジオぬえという組み合わせは実にすばらしかった)
「2199」では第1TVシリーズを尊重しつつ、ヴィジュアル面でも大胆な再構築もしくは改変をしてほしいと思う。
冷静に考えれば、松本零士的なものは古臭くて、賞味期限切れしたもので、カネを生み出せるものとは言えないとも思う。


松本零士と賞味期間


1974年の「宇宙戦艦ヤマト」参加をきっかけに、松本零士はアニメの世界にどっぷり浸かっていった。1979年の「銀河鉄道999」大ヒットで「松本零士ブーム」が到来、立てつづけにアニメ作品に関わるが、映画「わが青春のアルカディア」が興行的に失敗し、そのTV版「わが青春のアルカディア 無限軌道SSX」も視聴率が振るわず、途中で打ち切りとなり、ブームは終焉する。
わずか数年で松本零士は消費され尽くした。




しかし、パブリックイメージとして「アニメ界の巨匠」と見られていて、以後もメディアに登場すると「アニメ界の巨匠・松本零士先生」と呼び習わされていたように思う。それを見聞きするたびに違和感を覚えた。
アニメの現場にいるクリエーターに失礼な言い方だからだ。
ストーリーの大枠と何枚かの設定とイメージ画を描いてアニメクリエイターと名乗られてもどうかと思う。実際は、表に出てこない現場のスタッフの努力によって支えられているというのに。

いわゆる「松本アニメ」の隆盛期は、1977年の『宇宙戦艦ヤマト』劇場版から1983年の『宇宙戦艦ヤマト完結編』までの時期。ピークは1979年の『銀河鉄道999』劇場版。
1980年代に入って、宮崎駿、押井守が登場し、新しい才能も次々アニメ界に入ってきた。アニメファンは「松本アニメ」への関心を失っていく。

では、マンガ家としてはどうだったか。
アニメにのめり込んで以降、本業のはずのマンガは画が荒れ、内容もスカスカなものになっていった。もとより伏線を回収することなく終わったマンガ、未完に終わったマンガが多い人で、「銀河鉄道999」すら未完である。加えて、荒れた画、手抜きである。
何ページにもわたって宇宙空間を航行する宇宙船が描かれ、ポエムのような口上が書かれて十数ページを消費する。宇宙船はコピー機で拡大もしくは縮小したものを貼りつけただけ。あるイベントで松本零士の原画を見て、心底驚いたものだった。コピーを貼って、周囲を塗りつぶしているものを展示する神経を疑った。





「新宇宙戦艦ヤマト」と「大YAMATO零号」


2000年になって、「新宇宙戦艦ヤマト」がアニメ映画化されるという話が出てきた。ベンチャーソフトというIT系の会社が制作し、勝間田具治が監督するという情報が流れた。ベンチャーソフトのウェブサイトには会社設立記念パーティ席上で制作を発表したと書いてあった。すでにベンチャーソフトはないが、パーティ参加者のサイトでこのことについて触れられている。

http://homepage1.nifty.com/akk-yihitk/reishi.htmhttp://homepage1.nifty.com/akk-yihitk/reishi.htm



同名のマンガを立ち読みして、クラクラ来たのを思い出す。
舞台は旧ヤマトの時代から1000年後の未来、正体不明の移動性ブラックホールが多数出現するという危機に、ヤマトが目覚める。古代進32世はじめ、かつてのヤマト乗組員の子孫たちが結集する。艦長は(もちろん)沖田十三。
なお、このヤマトはグレートヤマトと呼ばれ、旧ヤマトよりはるかに大きな宇宙戦艦に生まれ変わっている。
しかし、著作権裁判・和解を経て「新宇宙戦艦ヤマト」は没となった。 移動性ブラックホールというアイデアは、『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』の核となるアイデアでもある。 『完結編』後、90年代はじめの『復活篇』構想のアイデアは西崎・松本零士双方で使ってもいいという約束にでもなったんだろうか。 「新宇宙戦艦ヤマト」の代りに「大YAMATO零号」というOVAが作られた。 そして、さして話題にもならないで終わった。
「松本零士」という名前は、儲けをもたらさないものになっていた。









「宇宙戦艦ヤマト」の創りてだった松本零士がパチモノに手を出したというのがじつに趣深い。で、このアニメのパチンコ台「CR大フィーバー大ヤマト」は 大ヒットして莫大な利益をもたらしたのだという。
最近、知って驚いたのだけれど、松本零士は「Cosmo Super Dreadnought まほろば -超時空戦艦-」というアニメの新作に関わっている。
2013年に映画として公開されるのだという。

http://anime.com/Yamato/Leiji_Future_2011.html


2013年はとっくに過ぎた。 残念ながら、「Cosmo Super Dreadnought まほろば -超時空戦艦-」は企画だけで終わったようだ。

松本零士、じつは「宇宙戦艦ヤマト」を創りたいんだろうなあ…
クリエーターって、処女作の変奏曲を延々と作り続けるっていう説は当たっているのだと思う。

2010/08/20

『宇宙戦艦ヤマト復活篇』を観た。

2009年12月、「宇宙戦艦ヤマト」の続編が四半世紀ぶりに公開された。

その名も、「宇宙戦艦ヤマト復活篇」
お正月映画として百数十館で一斉公開されたものの、見事にコケた。
わずか4.5億の興行収入に終わり、公称25億円の制作費回収は絶望的。
じつは、おれも劇場に足を運んだ。三十数年にわたって付き合ってきたアニメだ。内容には期待できないと思いながら、映画館に出かけた。そして予想通り、失望と深い溜息とともに映画館を後にした。

「宇宙戦艦ヤマト復活篇」は、映画を、〈こう作ってはいけない見本〉として貴重だと思う。
まず、映画の内容について強権を振るえる人に作品を構築する力がないのがよくわかる。見ていれば頭の悪くなる展開が続く。
それはもう、悲しいくらい。
復活篇は、ご存知<赤坂のデスラー>と呼ばれた西崎義展が企画・原案・制作・総指揮・脚本・監督を務めて、字幕もかつて見たことないほどデカく映し出された。
スルドくて真摯な映画批評でおなじみの、ライムスター宇多丸が唱える「ワンマン映画 ー ひとりの人の肩書きがやたら多い映画、名前がデカデカと表示される映画は大抵駄作」説が当てはまる映画だ。

ヤマトの映画は、パターンに則って制作されてきた。

・地球に未知なる脅威が接近し、このままでは滅亡する。
・ヤマトが脅威に立ち向かうべく出撃する。
・敵は強大な宇宙帝国。
・ヤマトは苦戦するものの、味方の尊い自己犠牲にも助けられて勝利。
・かくして地球の脅威は去る。

今回も、このパターンを踏襲しているので、物語には新味はない。
敵は、地球に進路を取る移動性ブラックホールと、それを操る星間国家連合SUS。
ヤマトは移民船団を護衛しつつ、移民先の惑星アマールに到着。
ついにはSUSに宣戦布告。
ほとんど物語らしい物語はなく、ヤマトの戦い方に一方的に感服したSUS所属のエトス星艦隊のゴルイ提督がSUSに叛旗を翻して特攻をかける。アマール星のパスカル将軍もヤマトの盾となって散る。
SUS巨大要塞のバリアを破壊するのは、ヤマト副艦長の大村の特攻。
ヤマトがピンチになると、はい!と手を挙げて喜んで特攻をかける者が現れるのだ。
挙句の果てにSUSの司令官は、ヤマトの艦橋に現れて、秘密をベラベラ話して消える。
<知恵と勇気>で危機を乗り越える。それは望むべくもない。

登場人物はほぼ一新されているが、揃って魅力もないし印象に残らない。

復活篇の基本構成案は平成5年、石原慎太郎原案で発表されている。
今回の映画は、基本構成案にほぼ沿った内容だった。松本零士や豊田有恒などが構成案を叩いてストーリーを練り上げるというプロセスがあれば、もっと面白いお話になったかもしれないが、著作権をめぐる裁判を経て、<知恵袋>的な人材は去ってしまった。
となれば、西崎義展の思うままにお話が作られたということになる。

結果、「つまらない」「盛り上がらない」お話になってしまった。
西崎義展にはお話を面白く語る才覚はない。

旧作「宇宙戦艦ヤマト完結篇」から17年という時間が経っている。当然、「復活篇」はCGを大幅に採り入れたアニメになった。
しかし、個人的な好みで言うと小林誠のメカデザインは好きになれなかった。
戦闘シーンは、<いかにもCG>な感じにしか見えず、たまに良いと思えるカットがあると思えば、アメリカのSFTVシリーズ「GALACTICA」の戦闘シーンをいただいたと思える絵作りだった。
小林誠のブログを見ると、「GALACTICA」を礼賛しているという次第だ。
やれやれ。

あと、カットによってアニメの作画クオリティがおそろしく低かった。湖川友謙という、画力のある人が作画監督をしていたが、修正しきれなかったようだ。
「ヱヴァンゲリヲン」や「サマーウォーズ」と同じ年に公開されたアニメと思えない酷いカットが目立った。登場人物がみんな艦橋内で椅子に座っているので、動きが乏しい。たまに登場人物が歩くカットがあったりすると歩き方がヘンだったりする。

映画館で観たとき、観客は10人くらいだった。150人くらい入る劇場に10人だ。ガラガラなのに、なぜか隣にとても太った中年男性が座って、呼吸音が耳障りだった。 真冬なのに体臭が臭った。
「復活篇」を観ようと劇場に足を運んだのはほとんどが40・50代の古いおたくだった。
かくして興行は失敗した。
新しいお客さんを開拓できなくて、ヤマトにかすかなノスタルジーを感じる中年と、おたくを辞められない中年だけが集った。「ヱヴァンゲリヲン」や「サマーウォーズ」に熱狂する世代にとってヤマトは関心の埒外だった。

で、半年が経って、レンタルDVDが出て、セル版も発売された。
興行成績と同じく、 レンタルは回転しないし、セルは3万枚で頭打ち、ランク外。
レンタルDVD屋に行っても、置いていないか、ひっそり1本だけ貸出中になっている。

そんな中、いくつかのヤマト関連掲示板を読んで驚いた。
「ヤマト復活篇第二部」が作られると信じる人が少なからずいるのである。
劇場公開時は、何度も足を運び、DVDやブルーレイを何枚も買うという奇特な連中がそれを信じているようだ。
現実的に「ヤマト復活篇第二部」は実現の可能性は殆どない。制作費が回収できず、下請け制作会社にお金を払えない作品の続編などできるはずがない。よっぽど酔狂で金が余っていてヤマトが好きだという金持ちが出資すれば別かもしれないけれど。
四半世紀ぶりに封切られた新作のヤマト、ノスタルジーを覚えて映画館に行ったけれど、何やら不満とか物足りなさを覚えた人が少なからずいたのだと思う。そういった人の少なくない数が、「ヤマト復活篇第二部」を欲しているようだ。欲求不満の解消を求めて。




いつか、「復活篇第2部」は作られるのだろうか?

もし作られたとして劇場に足を運べるのは最初のTV版から半世紀以上過ぎた時で、ガラガラの館内にはヤマトが好きだった老人がのろのろと集うのだろうか?

(追記)

2010年11月に西崎義展が小笠原で溺死。
その後、ヤマトの制作会社・エナジオは 「宇宙戦艦ヤマト復活篇 ディレクターズカット」を小林誠監督で制作すること、「復活篇第2部」「宇宙戦艦ヤマトTVシリーズ」を制作することを発表している。TVシリーズは最初のTVシリーズのリメイクらしい。