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2018/03/08

Netflixは平井和正の傑作『死霊狩り』をアニメ化せよ。

平井和正の『死霊狩り(ゾンビー・ハンター)』はNetflixかAmazonビデオでアニメ化したらいんじゃないかと思う。




世界では局地的な戦争や内戦が続いていた。世界には憎しみが充満していた。
東西の陣営は軍拡競争に奔走し、人類は、世界滅亡の危機にさらされているのだ。
そして、人類にはもう一つの深刻な〈見えない危機〉が迫っていた。
宇宙から未知の生命体が侵入してきた。そいつらは、寄生生命体で、人間に憑依し、たちまち狂暴な怪物に変えてしまうのだ。
この恐るべきエイリアンに対抗すべく、世界中から過酷な選別テストを経て選ばれたキリングマシーンたちで結成された超国家的秘密機関、それが〈ゾンビーハンター〉だ。

恋人も生活もゾンビーに奪われ、憎悪に身を焦がす主人公、田村俊夫。
物語は、田村を見舞う過酷な運命を容赦なく描いている。
中東出身の女戦士・ライラ、そして物語のカギを握る謎の多い中国人・林石隆。
ゾンビーハンターたちが実にいい。
そして謎の司令官〈S〉も正義の側にいるはずなのに、おそろしい相貌を持っている。

平井和正の人物描写と文体はじつに魅力的。
情念を濃密で、飽きさせない文体で書いている。
読み終わるのが惜しい。

〈ゾンビーハンター〉になるための過酷かつ暴力的なサバイバルテストの描写。
ゾンビーハンダーが使う銃火器の描写も、暴力描写も大藪春彦の小説に酷似している。
ある時期までの平井和正の小説は大藪春彦の圧倒的な影響の下で書かれていた。
この作品は初期『ウルフガイ』シリーズとともにその影響がはっきりと出ている。
しかし、人物描写で、平井和正は魅力を放っていて、単なる模倣者で終わってしまった暴力小説の作家たちとは異なる。

『死霊狩り(ゾンビー・ハンター)』は、魅力的な題材なのに、今まで映像化されていない。
いま日本で〈侵略テーマ〉でかつ暴力的な描写の際立つ小説を映像化しようとするのであれば、アニメーションがいい。
で、映画だと2時間という長さで収めるという時間的な制約があり、原作小説3巻ぶんを駆け足で描くか、2部作・3部作で描くという、興行的なリスクのある方法となる。

となれば、映像表現で制約がなく、かつグローバルな市場のあるネット配信のアニメシリーズがいいのではないか。
『BLAME!』『DEVILMAN Cry Baby』『B:The Beginning』など、これまでの日本アニメの表現から踏み出した領域に挑んだアニメに続く作品として、『死霊狩り(ゾンビー・ハンター)』は適している。
例えば、膨大な軍事知識の持ち主でもある片渕須直監督が取り組んだら・・・などと想像をたくましくしてしまう。
この小説が描くのは、人類の業であり、それを稀代の映像作家がどう描くか、見たいという欲を持ってる。

平井和正が静かに世を去って、その名は人々の記憶から消えようとしている。
『幻魔大戦』で、合計2,000万部も売った作家であるはずなのに、名は知られていない。
それが悔しい。
初期から中期の脂が乗っていた頃の平井和正の小説は、本当に面白いのだ。
多くの人に読んでほしい。

2018/03/02

『バトルスター・ギャラクティカ』から類推する『宇宙戦艦ヤマト2202』の展開

『宇宙戦艦ヤマト2202』は『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』『宇宙戦艦ヤマト2』の2次創作である。
30年以上の時が経過しているというのに、映像面のクオリティの低さをしっかり継承している。
『宇宙戦艦ヤマト2199』の続編ではない。
キャラクターデザインは流用しているが、『2199』のもう連続性はどうでもよくなっている。

それに、ほかの要素が色々と混入している。

誰の意向か知らないがアニメや映画やアメリカのSFTVシリーズから設定やら話の骨子やら、色々と盗んでいる、もとい、参考にしている。
『伝説巨神イデオン』や『超時空要塞マクロス』『エヴァンゲリオン』『機動戦士ガンダムUC』そのほかといったアニメからの引用やパクリ指摘は他の人に譲る

これは『バトルスター・ギャラクティカ』をやりたいんだろうな、と思った。
シリーズ構成の福井晴敏はインタビューで「アメリカのSFドラマのようにいろいろな要素を盛り込んだものにしたい」などと語っている。

『宇宙戦艦ヤマト2202』に登場するガトランティスは先史文明人が創造した「人工生命」である。
これは『バトルスター・ギャラクティカ』からのわかりやすい影響と言うか引用というかパクリである。

『ギャラクティカ』はどんな話なのか。

宇宙のどこか、人類は12コロニー惑星(コロニアル連合)で繁栄を謳歌していた。
あるとき、人類が創り出したロボット/人工知能が反乱を起こし、コロニアル連合は壊滅、かろうじて生き残った人類は退役した宇宙空母ギャラクティカを中心に船団を組み、13番目の伝説のコロニー「地球」を目指す過酷な航海に出る。
サイロンは人間と全く見分けがつかない〈人型サイロン〉を創り出し、船団の人々の中に紛れ込ませている。
不信が渦巻くなか、苦しさに満ちた航海が続く。

『宇宙戦艦ヤマト2202』のガトランティスはサイロンによく似ていないか。
これに、『伝説巨神イデオン』の要素を入れてみる。
現在の文明の前にあって今は消え去った文明人の遺したものが、この宇宙に存在する。それはこの宇宙そのものを消し去りかねない〈力〉である。

そうして類推できる『宇宙戦艦ヤマト2202』のおはなしは、こうだ。

いまの前の文明が繁栄していた時代、銀河宇宙にはアーケリアス文明を築いた生命体がいた。
彼らは高度な文明を築き挙げていた。
彼らは高い次元へと移行し、銀河系宇宙の生命体の生存に適した惑星に自分たちの文明を継ぐ存在を生むべく、〈種〉を播いた。
その種から、イスカンダル、ガミラス、地球などでは、ヒト型知的生命体が誕生して文明を築いた。
アーケリアス文明を築いた生命体は同時に、機械生命体も創り出していた。
それはヒト型知的生命体の築く文明を監視し、もし知的生命体が暴走したときにこれを滅ぼす〈安全機構〉である。
これはガトランティスという名を持ち、自己複製で世代を継ぎながら銀河系宇宙を監視し続けている。
テレサは、アーケリアス文明のメッセンジャーであり、〈世界のリセットスイッチ〉である。

ガトランティスは、地球が波動砲を開発したことを探知した。
地球を壊滅させるため、動き始めたのだ。
闘いはガトランティス対地球・ガミラス、そしてイスカンダルまで巻き込んで拡がり、この宇宙のヒューマノイドの存在を賭けたものとなる。









と書いてみたが、ガトランティスって惑星の文明を滅ぼすのに戦艦だとか自爆する兵士とかを使ってダラダラとやってるのは頭が悪い。
250万の艦隊が登場し、しかも一瞬で無力化してしまうとか、意味の分からない描写もあって首を傾げる。
最終兵器というか、「彗星都市帝国」があるんだから、最初からそれを使って地球を滅ぼしてしまえばいいのにそうしない。
そうならないのは、作られた存在で自己複製をしてきたガトランティスの中で、「個」による葛藤が生じてしまったのだ、というのをやりたいらしい。
これは『バトルスター・ギャラクティカ』の敵役・サイロンの中で、対立が生まれて人類側に与する者が現れるというのをなぞりたいのかもしれない。
サーベラーが複数登場するというのは、『ギャラクティカ』の剽窃とも『エヴァンゲリオン』の綾波レイの剽窃とも取れるが、例示してみれば新味がないのがわかっちゃう。
おまけに『宇宙の戦士』 オマージュとでもいうのか、強力な火力のアーマメントを付けた兵士も登場して、旧作品の世界観とは異なるのをあからさまにした。
 『バトルスター・ギャラクティカ』をパクるのなら、人物の描写の重厚さ、深さを真似ろ、と言いたいが、アップの口パク多用の現状では「芝居」は望んでもしかたがないことなのだろう。

訳がわからないのは、チラチラと宗教的な要素が見え隠れすることである。
ガミラス艦には経文みたいなものが刻んである。
テレザート星のテレサは蓮の花に乗っかって登場した。
なんだろう、仏教系国粋系教団かなんかが噛んだりしていないだろうな。

案外、ラストは『伝説巨神イデオン』のようにすべてが因果地平の果に去って、ヒューマノイドはいちからやり直しみたいになったりするか。
打ち切りがなかったら。

こんな色んな要素を入れ込むが、問題なのは面白くないことだ。何をやっても、「作品を観るときのカネと時間に見合う面白さを提供できていない」というのがクリアできていないのはエンターテインメント作品の提供者として恥ずべきである。
ごちゃごちゃしたものを低予算であまり技量のないスタッフで作ってる。
『バトルスター・ギャラクティカ』を紙芝居で私どもなりに作りましたよ、どうでしょうか。
30年くらい前のアニメみたいな演出で、画があんまり動かなくてときに作画の質が落ちてしまうという品質で作られているのだ。

面白くなくて質も低いしそのくせ見るのにカネと手間がかかるわで客が離れてしまい、肝心のDVD/Blu-rayの売上は下がる一方。
(と思ったら、がったり下がるということはなくて、「3章」の2万枚。コアなヤマトファンのロイヤリティの高さには驚く)

打ち切りのリスクが高まって、アメリカ製SFドラマみたいなものにするという野望は潰えるのだろうか。
アメリカのSFドラマは盛大に風呂敷を広げたものの、視聴率や再生率が悪くて非情にも打ち切られる作品もやたら多いのだ。
そうならないことを祈らないでもない。