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2016/10/08

呪いの心霊ビデオと制作費と現場の貧困。


おわかりいただけたであろうか。

投稿型の心霊ビデオで、「霊」が映っている箇所をリピートする前にナレーターが必ずいうコトバだ。
これから、「霊」を見せて説明するよというサインである。

 「おわかりいただけたであろうか」は、『ほんとにあった!呪いのビデオ』初期からナレーションを担当してきた中村義洋が最初に使ったのではないかと記憶する。
中村義洋は映画監督として名を成して、話題作を手がける人だ。
いま、他の心霊ビデオでもナレーターは 「おわかりいただけたであろうか」と判で押したように言うのだ。

ちょっとばかり「おわかりいただけたであろうか」を見てみよう。



おわかりいただけたであろうか。
UFOが出現したのでビデオで撮影していたら、脚が映った。このビルではかつてOLの飛び降り自殺があったという。
なお、UFOも映っているそうだ。


おわかりいただけたであろうか。
防波堤で釣りをしていた人がビデオ撮影していて、偶然捉えたのである。


おわかりいただけたであろうか。
廃墟となった遊園地の、もう使われていないロープウェイを撮影したところが、窓から覗き込む何者かが映ったのである。




レンタルDVD屋さんには「心霊」のコーナーがあって実話系/実録系ビデオが置いてあるはずだ。
霊がこんなに撮られているのだ。

すごいと思わないか。
視聴者投稿の「心霊ビデオ」によくみられるのが心霊スポットで撮影されたというものだ。
心霊スポットの多くは、廃墟である。
「閉鎖された病院」「廃業してしまったホテル」「殺人事件の現場となったために無人となった住宅」などを視聴者が訪れてビデオを撮影した。
すると、「霊」が映った。
視聴者は鑑定・調査をしてほしくて心霊ビデオの制作スタッフにビデオを投稿する。
機材は、ほとんど民生用の安い機材だ。
投稿されるビデオは、もちろん民生用ビデオカメラ、動画撮影ができるコンパクトデジカメだったり、携帯電話で撮影されたものである。
ビデオグラムの中で、投稿されたビデオが披露され、「取材班」だとか「制作委員会」が取材活動をし、その様子も報告する。
ビデオを撮った視聴者は、インタビューに回答したりする。多くの場合、<プライバシー保護のために>顔にモザイク加工が施され、音声も変更されてしまう。

単純な疑問がある。
これは建造物不法侵入にならないのだろうか。
現在は使われていない建造物であっても、持ち主はいる。
そこに無断で入り込んで撮影する。そうやって撮影された映像や写真を使って、商業的映像作品を作る。
そんなことが許されるのだろうか。

ときにビルなどの監視カメラの映像や自動車に搭載されたドライブレコーダーで撮影されたという映像も紹介される。

「実録心霊ビデオ」は、あまり予算をかけずに制作できる。いや、予算がかけられないとしても、作れる。
「視聴者」からの投稿だから、性能の低いカメラで稚拙に撮られたものでも許容される。素人が廃墟などで大体の場合は夜暗い中で撮ったものなので、ひどく荒れた映像になる。


心霊ビデオはかなりの数、リリースされている。

見ていて感じるのが、予算の少なさである。

投稿されてきたビデオは、たぶんパソコン上で編集で、ナレーションと音の調整も外部スタジオなど使わないで、制作会社の事務所、スタッフの住まいだったりするだろう。
画面のチープさからはそういった諸々を想像してしまう。

心霊ビデオは、ビデオとしてレンタル・販売・配信されている以上、視聴者を楽しまなければならない。金を払ってみてくれている人に満足感を与えないと、次に見てもらえない。
「本物の霊」が撮影できたらいいわけだが、言うまでもなく本物の霊が撮影できるわけもない。たとえば、視聴者投稿(という設定)の動画を検証するために心霊スポットに行きました。だけど、何も撮れませんでした・・・なんてオチはガッカリどころか、怒る人も多いだろう。
かくして、視聴者にフェイクを見せざるを得ないのだ。
謎の声や怪しい音を付け足したり、幽霊の画を入れたりと、「化粧」しないと製品として成立しない。こうしないと地味でつまらない作品にしかならず、とても販売できるわけがない・・・。
心霊ビデオというジャンルはフェイクありきなのだ。
本物の幽霊が映ったとしても、実際はかなり地味だし、判別が難しい。そうなると本物は捨ててフェイクの幽霊を作って映像に入れこむこともある。
演出や編集時の動画加工でフェイクの幽霊が作られる。ところが、そのフェイクのレベルが低い。
今の時代、心霊写真はパソコンが使えて画像加工ソフトが使えるのであれば素人でも作れる。心霊動画も、動画編集ソフトがあれば作るのは難しくはない。
「素人のようなフェイク動画」が商業作品に収録される。
考えられる理由は、制作費が安くて映像加工の費用が捻出できずにスタッフがやってるとか、ばかみたいに安い値段で外注に出してるとか、そういう様子だ。

で、フェイク心霊動画の作り方を解説した動画がある。




実録心霊ビデオの制作コストはどれくらいなんだろうか。
少し調べてみよう。
これは今流行の「クラウド・ソーシング」のサイトで見つけた案件だ。
クラウドソーシングは、不特定多数の人の寄与を募り、必要とするサービス、アイデア、またはコンテンツを取得するプロセスである。このプロセスは多くの場合細分化された面倒な作業の遂行や、スタートアップ企業・チャリティの資金調達のために使われる。

予算

324,000円
納品希望日 -
特記事項 継続依頼あり

仕事の詳細

弊社DVD販売・映像配信販売等用にホラーオムニバスドラマの制作の仕事を依頼したく、
クリエイターの方を募集します。

▼お仕事の詳細:
・全7話(40~50分)のホラーオムニバスドラマ制作
 7話の内訳は、前後編ものを2本(=4本)+1本モノを3本→計7本です。

・特典映像(出演者のインタビューなどメイキング映像10分ほど)

・脚本に関しては弊社からの提供になり、予算の範囲内での脚本を相談の上作成し、提供いたします。
 また、脚本の1編1編はできるだけシーン数・出演者数の少ないものを予定しております。

・場所の仕込み、出演者、撮影、編集等全てをお任せいたします。
 なお、出演者の手配はお任せいたしますが、出演料の支払いは弊社から行います。

・ご納品は、完パケデータ、キャプチャ画像、CM完パケデータ、特典完パケデータ、編集データをお願いいたします。

・同作品は、関東の民放や地方局、CS局等への番組販売をしており、現在は関東の民放にて放送されております。

▼重要視する点・経験
・映像制作のプロデュース~制作を行ったことがある経験
・ドラマ系の映像の制作経験

▼仕事の進め方
・制作委託契約書を締結後、脚本について打合せします。
・弊社にて脚本を制作いたします。
・脚本を元に打ち合わせをします。
・御社にて映像の制作をしていただきます。
・出演者や撮影場所などをご報告いただきます。
・編集された映像のプレビューいたします。
・修正後に完成納品いただきます。
※弊社にはナレーションブースがございますので、必要な場合は無料でご使用いただけます。

ご不明点や質問はお気軽にご相談ください。

たくさんのクリエイターの方からのご連絡・ご応募お待ちしております。

https://crowdworks.jp/public/jobs/713436

「全7話(40~50分)のホラーオムニバスドラマ制作」「特典映像(出演者のインタビューなどメイキング映像10分ほど)」の映像制作である。
「場所の仕込み、出演者、撮影、編集等全てをお任せいたします。なお、出演者の手配はお任せいたしますが、出演料の支払いは弊社から行います」という仕事で、324,000円である。
これで利益が出るのか、と思う。
発注側の会社もどっかの下請けで驚くほど安い値段で受けてるのかもしれない。





幼児殺人があったとかいう廃墟に出現した幽霊だという。

まあ、こういう制作費だと、幽霊のリアリティは著しく低下してしまう。
おまけに納期もないものだから、丁寧に幽霊を描く時間がない。

心霊動画を見つつ、貧困にあえぐ零細ビデオ事業者のことを思い浮かべよう。
どこだかはっきりしないロケ場所はどこか。
コストをかけないで撮影するためにどのような苦労をしているのか。
「取材」を受ける投稿者や心霊体験をした人のギャラはいくらか。
登場する「幽霊」や「怪異」は誰が作っているのか。もしかしたら、映像合成が得意な専門学校生や自主映画作ってる学生が驚くほど低いギャラで作ってるのではないかとか。
編集は録音ではパソコン編集で何日くらい徹夜してるのか、とか。


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