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2015/01/12

【待望論】宇宙戦艦ヤマト復活篇第2部

「宇宙戦艦ヤマト復活篇第2部」を待望する声がある。
いつか、それがスクリーンで上映されることを信じる人達がいる。

「宇宙戦艦ヤマト復活篇」は2009年12月に公開された。
公開前、西崎義展は「崖の上のポニョ以上の興収をめざす!」とぶち上げて見せた。
しかしながら公開されるや、興行的に大失敗した。
劇場には閑古鳥が鳴いた。全国233スクリーンの公開にもかかわらず、4億円程度の興収で終焉。

ポニョの興収は155億円、対するは4億円以下。





壊滅的な大赤字となったからか、脚本家や制作会社XEBECへの支払い遅延や、不払い騒動まで起きる始末。
公開の11ヶ月後、西崎義展は小笠原で海に転落。不帰の客となった。
実写版リメイク「SPACE BATTLESHIP ヤマト」公開のひと月前のことだった。実写版の原作料で買った船「YAMATO」から転落したのだという。

宇宙戦艦ヤマト復活篇 交響曲ヤマト2009

「ヤマト」のほぼ全部を支配してきたワンマン・プロデューサーが他界。
これで「ヤマト」も終わりかと思われた。

しかし。

「宇宙戦艦ヤマト復活篇」DVD・Blu-rayのセールスが累計5万枚を突破するという好調ぶり。5万枚というのは、「エヴァンゲリオン」や「ガンダムUC」のようなメガヒット作品からすれば大した数字ではないが、映像ソフトの売上としては上々の部類に入るらしい。
まして、中高年向けという、これまでは大きくなかった新しい市場を拡張したのだ。
上出来なのかもしれない。


「宇宙戦艦ヤマト 復活篇第2部」の道筋を
つけたのは、(オールド)ファンたちだ!

熱心な中高年ファンたちはシネコンに何回も足を運び、グッズも買った。
また、DVD・Blu-rayソフトについては、人によっては複数枚を購入してセールスを支えたのだという。悪辣さでおなじみの「AKB48商法」を自ら進んで行った酔狂な人がいるというわけだ。
5万円もした「宇宙戦艦ヤマト復活篇コンプリートBOX」も限定1万セットが全部売れた。

パチンコ台もヒットとなったようだ。
それが「宇宙戦艦ヤマト 復活篇」復活のカギになるのかもしれないのだ。
パチンコを打つ人たちはまずアニメなど見ないと思われる人たちである。そういった人たちがこのパチンコ台で打ってくれたおかげで、もしかしたら「宇宙戦艦ヤマト復活篇第2部」が実現する可能性があるのだ。





こうした事情が支えになったのか、「復活篇」を制作したエナジオ代表の西崎彰司は「復活篇第2部を制作する」とぶち上げた。 西崎彰司は西崎義展の養子である。
1993年に発表された「3部作構想」を捨てて、第2部で完結にするということにするという。

その道筋を地ならししようというのか、『宇宙戦艦ヤマト復活篇ディレクターズカット』のブルーレイ/DVDが発売された。
ある程度の予算をつけ、再編集をして余分な尺を落とし、テンポを良くした。不評だった音楽にも手を加えて、旧作の音楽を大幅に追加した。


宇宙戦艦ヤマト 復活篇 ディレクターズカット [Blu-ray] 宇宙戦艦ヤマト 復活篇 ディレクターズカット [DVD]


アクエリアス氷塊からのヤマト発進シーンはアルフィーの歌う「宇宙戦艦ヤマト」を外して、インストルメンタルに変更した。
不評だったクラシック音楽もほとんどがヤマトの旧作の音楽に差し替えられた。

ラストは変更された。
地球がSUS(星間国家連合。Super United Stars の略だとかいうが、これは地球が名づけた俗称なんだろうか?あるいはこの世界では宇宙規模でアルファベットが使われているのだろうか)の移動性ブラックホールに呑み込まれて姿を消す。地球は、銀河中心にワープしたという。
地球の残存艦隊が登場し、ブルーノアと同型の宇宙空母や、アンドロメダ型戦艦、波動実験艦ムサシなどが姿を見せた。
ヤマトは地球を捜すため、銀河中心に向けて旅立つ。

これは第2部への布石を打ったということらしい。

では、第2部の展開を予想、いや、邪推してみよう。
その前に、「宇宙戦艦ヤマト復活篇ディレクターズカット」のラストが気になって仕方があないので、ちょっと書いておく。


惑星がワープ?地球は大丈夫なのか?
「復活篇ディレクターズカット」のラスト。


あれでいいの?



地球はSUSの移動性ブラックホールに呑み込まれて姿を消しちゃうんだよ。
地球が太陽系の軌道から外れ、月も伴うことなくワープっていう、ビジュアルだけを頭に置いたバカな設定を映像化してる。
ワープする惑星上の大地や海や生命体が一体どうなるのか。
考えると恐ろしいけれど、それは描かれるはことなかった。
赤い空間に消えてゆくという画でお茶を濁した。

しかし。「ヤマト世界」にあってはどうにかなるんだろう。
「ヤマト世界」とは、赤茶けて海を失い、放射能まみれになった状態からたった1年で海水も緑も正常な大気も数多くの生命体も復活し、いとも簡単にビルが林立する繁栄を取り戻したばかりか繁栄に酔いしれてヤマトを忘れてしまうという、おそるべき世界である。

銀河中心にワープした地球は、たぶん大丈夫ということなんだろう。銀河中心にワープした地球は幸いにもどこかの恒星系の軌道に乗っかって生存のためのの環境は保たれるとする。もしくはSUSがそういう環境を提供したとか、そういうことなんだろう。

惑星が移動する話は、ヤマトでは珍しくない。
「宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち」では、イスカンダルが漂流を始める。
ガミラス星が消滅した結果、連星だったイスカンダル星が漂流し始め、漂流速度が上がってワープしそうになる。結局、スターシャは暗黒星団帝国の自動惑星ゴルバを道連れに、自爆。イスカンダルは消滅するのである。  スターシャがなぜイスカンダルと運命を共にしたかといえばお涙頂戴のためである。
「宇宙戦艦ヤマト 完結編」では水の惑星アクエリアスが大ディンギル帝国によってコントロールされて地球近くまで移動する。
しかも、大ディンギル帝国は母星がアクエリアスから降り注いだ水によって滅亡したのだ。「宇宙戦艦ヤマト 完結編」は、母星を滅亡させた星の動きを制御できるという理解に苦しむ設定が話の核になってるのだ。

うーむ。

こういう粗雑な設定を臆面もなく導入しちゃうから、昔のファンが逃げていったんだよね。

「宇宙戦艦ヤマト復活篇 第2部」では、銀河中心にワープした地球は幸いにもどこかの恒星系の軌道に乗っかって生存のための環境は保たれるとする。もしくはSUSがそういう環境を提供したとする。

その前提で話を進めていきたい。

「宇宙戦艦ヤマト 復活篇第2部」は
まず、興行的なインパクト付加を考える。
カギは<脱・松本零士>

映画とは興行である。客を呼ぼうと思ったら、メディアが積極的に取り上げたり、 ツイッターでリツイートされたり、Facebookでイイネ!されたりする仕掛けを用意する。
今回、「復活篇第2部」でのアット驚く仕掛けである。

テーマは、ずばり「初心に帰る」である。




松本零士が企画に参加する前の「宇宙戦艦ヤマト」企画書である。
ヤマトの原点とでも言うべきこの企画書に立ち返る。
「宇宙戦艦ヤマト 復活篇第2部」は企画書にあるさいとうたかおタッチのデザインまで戻るのだ!このタッチを採用して、登場人物のデザインを一新する。どうせ、古代進、真田志郎、佐渡酒造以外の人物はだいたい死んでるか出てこないし、「復活篇」から登場した人物は印象が薄いから問題はない。
さいとうたかおタッチの登場人物。これはアニメファンに多大なインパクトを与えるだろう。萌え絵全盛のアニメ業界にも巨大な一石を投じることにならないとも限らないとはいえない。
敵であるSUSのキャラクターデザインも変えよう。
植田まさしで行こう。



意表を突いて、大きな話題呼ぶはずだ。
異種異根の生命体だ。さいとうたかおタッチと全く違うが問題はない。
しかも。
かりそめにも30年以上も発行部数世界一の新聞連載をしている漫画家を採用するのだ。新しい観客の動員も期待できるではないか。


「宇宙戦艦ヤマト」デザイン変更で話題を作れ!


キャラクターデザインを変更したのなら、メカも変えよう。
この際、松本零士臭を全部抜いてしまって、これにしてしまえ。





あ、原点回帰なので「戦艦大和」そのまんまの姿でもいいんじゃないか。




これで行こう。
「戦艦大和」そのまんまの姿で登場する必然性を誰もが納得できるように説明するのが大変じゃないかって?
ま、ヤマト世界だ。何とかなるだろう。

「宇宙戦艦ヤマト」ならではの西崎っぽさ追求。

ストーリーは、「西崎メソッド」とでもいう、ヤマトならではの黄金パターンで進行するのがいい。
 「西崎メソッド」は「さらば宇宙戦艦ヤマト」以降、「復活篇」に至るまでのストーリーラインを支配したデウス・エクス・マキナとお涙頂戴の決まりごとだ。

「西崎メソッド」とは

・遙か宇宙の彼方から邪悪な脅威がやってきて、地球は危機に陥る。

・ヤマトは危機に立ち向かう。

・救いの女神的な存在が現れる。

・ヤマトが困難な状況に陥ると、主要な人物のうち誰かが自決したり特攻したりして犠牲となって敵を撃破、事態が好転する。  さして必然性がないのに、主要な登場人物が死んで、死に際に「地球を頼む」などと言う。

・多大な犠牲を払いながら、地球は救われる。

こういうベタさは、今も根強く受容されている。
ま、単純なファンを泣かせることができる。感動したように思わせるのにはぴったりだ。だけど、さすがに古い。古過ぎる手法だ。

復活篇では、

・敵役が目の前に現れて、長々と説明をして、観客が映画のストーリーをかんたんに理解できるようにする。

が追加された。

復活篇では、SUSの異次元の生命体がわざわざヤマトの艦橋に出現、侵略の理由をながながと語るのだ。
悪役や悪の黒幕が窮地に陥った善玉の前で、自分のやった悪行やら陰謀を語る。時代劇ではおなじみの作劇である。これは、わかりやすさを優先したテレビ時代劇のために使われた手法である。

結局、旧「ヤマト」がダメになっていったのは、ストーリーに権限を持つ人が<受けること>に固執してしまったからだ。

・ヤマトが困難な状況に陥ると、主要な人物のうち誰かが自決したり特攻したりして犠牲となって敵を撃破、事態が好転する。

『さらば宇宙戦艦ヤマト』でうまくいったこの手法が繰り返されたのがよくなかった。成功体験を何度も繰り返した。
挙句、飽きられた。

しかし、自己犠牲は 『さらば宇宙戦艦ヤマト』以降の定番。
よって、 それを採用する。
そのほうがオールドファンのほとんどはうれしいはずだ。



3 件のコメント:

  1. 芥川賞受賞のSF作家である円城塔がSelf reference engineで描いた地球外知性体は、コンピュータで生み出した着流しの老人の姿で、地球のコンピュータネットにハックしてくる、というものでした。
    植田まさしというのも秀逸なアイデアですが、本当に西崎氏や松本氏のSF感が既に半世紀は古いという事をとうの本人達が全く気付いてないところが、あんな悲惨なヤマトの連発となったのでしょうね。

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    1. 「宇宙戦艦ヤマト2」から「宇宙戦艦ヤマト 完結編」までは、ビジネスで言えば、<成功パターン>に拘泥して凋落していった企業ですね。
      外部の血を入れることも、ライバルというべき作品を分析してみるといったことをしなかった結果、客が離れていった老舗企業です。

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  2. ただ、ハミルトンの一連の短編集(反対進化やフェッセンデンの宇宙)をいま読んでも成る程と感心させられます。
    これら50年以上前の作品でも今も輝く作品はあり、作品における一流と三流の違いを痛感します。
    ハミルトンの一連の短編集は創造の神のために書かれた珠玉の作品であり、一方乱発したヤマトは観客すら置いてけぼりの、作者達のために作られた駄作です。

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