アニメ番組を放映し、見ている子供や大きな子供対象の商品を扱っている会社がスポンサーになってCMを流す。結果としてモノが売れれば、会社は儲かり、子どもや大きな子供は喜ぶ。シンプルなWin - Winの関係だったはずだ。
深夜に放映しているアニメ番組は、DVDやBlu-ray、キャラクター商品を売るためのプロモーションとしての色合いが濃い。気に入った人はもっと画質の良いソフトや、グッズを買ってねというわけだ。
これまた、ただで見られる。
そんな当たり前のことを思い返したのは、「宇宙戦艦ヤマト2199(1)」のBlu-rayの値段の高さに驚いたからだ。
ただで見られるはずのアニメがカネを出さないと見られなくって、しかも高い。
50分、TVアニメ2話収録したものが7,100円。
これは高いと思う。販売元のバンダイビジュアルは、もとより映像ソフトに高い値付けすることは承知している。でも、それにしても高い。
「宇宙戦艦ヤマト2199(2)」は4話収録、特典映像を含めて166分で8,100円。50分で7,100円に比べると安く感じられるけれども、amazon.comでアニメのBOX価格を調べると、日米の価格の隔たりには驚くしかない。
Infinite Stratos
以前、「ブレードランナー」のDVD-BOXの国内盤を買おうと思ったら1万5千円で手が出ず、アメリカ盤を買った。国内盤の5分の1だったので。この差は大きい。(後に、国内盤も新古品3千円でゲットしたけれども)
今どきアニメーションのソフトの価格とは「価値」「満足」への対価なのだから、「高くないよ」と言えるひとが買うんだろう。
この「宇宙戦艦ヤマト2199」に先立って、「機動戦士ガンダム Unicorn」は全国映画館での期間限定イベント上映、DVD・Blu-ray発売、ネット有料配信の戦略が功を奏して大ヒットになった。ヒットの理由について、サンライズの宮河恭夫プロデューサーが講演のなかで語っている。
宮河
それで、まずやはり有料配信が物議を醸しまして、有料配信をしちゃうと映画館に人が来ないんじゃないかとずいぶん映画関係の人から言われま した。でも僕は「関係無いよ」と。映画館というの大きな画面で見るわけだし、有料配信っていうのはネットで見るので限られたサイズの画面でしか見られない ということで。ただ実は有料配信に関してもクオリティの高いものを見てもらいたいというのがありましたので、安定的なHDが見られる環境でPlayStation Network(PSN)が当時一番だったのと、ガンダムUCのターゲット層がPS3の購買層と合致したので、PSNと組んで最初はHDで独占配信しました。ちなみにここでも面白いデータが出て、HDとSDでのネット配信では、HDの購入数のほうが圧倒的に多かったです。
結果的にイベント上映、有料配信、そしてBlu-rayがどういう効果をもたらしたかというと、おかげさまで成功だったと思います。エピソード2のとき は、映画館用に5000枚用意したBlu-rayが1日で売り切れてしまいましたので、エピソード3では1万枚は用意しようと思っています。公開している 映画館10館でそれだけ売れて、一般市場では20万枚を超えるヒット作と考えています。先ほど言ったPSNでも非常に高い数字が出ていますので、みんなが考えてる大人の事情のウインド戦略っていったいなんだったんだろうな、というのが今の感想ですね。
GIGAZINE
「これからは大人の事情の戦略は通用しない、サンライズ宮河常務の語る今後の
コンテンツ産業の新マーケティング」から引用。
「ウインド戦略」は、「映画公開後、またはTV放映後、ウインドを開けてDVD・Blu-rayを発売する」という意味なんだという。その間に購買意欲が下がるから、公開・配信と同時にDVD・Blu-rayを出してみようとした。で、これが大当たりした。
当然、<柳の下のどじょう>が出てくるだろうなと思っていたら、それが「宇宙戦艦ヤマト2199」だった。
1エピソード24分というTV放映の長さになっているところからすると、当初はテレビ放映主体の展開を目指していたのかもしれないとも思う。
「宇宙戦艦ヤマト復活篇」という大駄作にして興業失敗作のあとだけに、果たしてどうなるかと思っていたけれども、セールスは順調のようだ。
まあ、一部公開・配信されたPVや1話冒頭を見て興奮しないオールド・ファンはいないだろうけれども。あれで一気に盛り上がった。
単純な話、ていねいに作ってあって質が高いアニメだったら食指が伸びるし、ソフトを手元に置いておきたいと思うわけだ。で、ソフトがほしいとなったらamazonですぐに買える。ウェブサイト上のプロモーションは、販売に誘導しやすく効率がいい。
あと、ほんらいアニメは好きあのだけれども、今放映しているアニメはどうにも肌に合わないというファンにも福音となったんだろう。
「ガンダム Unicorn」「宇宙戦艦ヤマト2199」ともにDVD・Blu-rayを売るための戦略であり、それが見事功を奏した。購買意欲が高いうちに一気に売る。
しかし、「ガンダム」「ヤマト」という強力なコンテンツだからこそ売れた点は否めない。この手法でオリジナル新作を売ったらどうなるんだろう?
こういうアニメの売り方にも高齢化社会・少子化社会の影響が見て取れるように思う。
子供がどんどん少なくなっていき、市場が狭まるとアニメの視聴者は減っていく。
それを補って新しい市場を作りたい。
となれば物心ついた時からアニメを見て育ち、いまだにアニメから離れない層を深く掘ろう。しかも、思い切り客単価を上げよう。
いま頃「宇宙戦艦ヤマト2199」に続こうと企画書を書いている連中はわんさかいるんだろうなあ。
そういえば、「仮面ライダー」もちょっと方向性は違うけれども、子供以外のお客さんづくりをかなり意識している。
とくに近年の映画はTVと違う層をねらっている。映画を立てつづけに公開し、DVD・Blu-rayを出す。<ディレクターズカット版>というプレミア性も付加している。
買うのは多分、平成仮面ライダーシリーズを見て育った20〜40代。 しかもイケメン俳優を使ってきたおかげで女性ファンもたくさんいる。
仮面ライダーや戦隊モノの劇場版は、東映の年間興行収入では上位に来るドル箱になっていることには驚く。(というよりも東映は企画が貧困な印象ではある)
しかし、なぜ「仮面ライダー」なんだろう。
個人的には、本格的な特撮モノというか、今の映像技術を投入した、鑑賞に耐えうるSFドラマを見たいと思うんだけれど。
あ、「仮面ライダー」って歌舞伎みたいな閉じた様式美的な世界を持ってるのかもしれないな。そういうのを好む人は「鑑賞に耐えうるSFドラマ」など求めないか。
JJエイブラムスがプロデュースしているようなSFドラマ、日本では夢なのか。
ヤマト2199のイベント上映、どんな人が並ぶかを新宿まで観に行った。予想通り、最初のTVシリーズからファン一筋という人が多かった。
あと10数年後経ったら、中高年向けアニメと特撮の映画がどんどん公開されてアニメ映画・特撮映画の行列はみな千円で入場できる年寄りばかりになるぞ。つまり、いまアニメ映画・特撮映画に行列している連中ががそのまんま高齢化していくのだ。
ところで、「宇宙戦艦ヤマト2199」はTV放映を待ちたい。つまり、ただで見たいと思うのだけれども、地上波で放送されるまでどれだけ待たないといけないのか。
というか、<ビジネスモデル>が不首尾に終わった場合どうなるのか。
単純な話、全7巻のうち、3巻あたりまでの売上が芳しくなかったら、途中で打切りもありうるのではないか?「製作委員会」は、投資に見合った利益を得られないとしたら、さっと撤退するのではないか?
となれば、ただで見たいというのも水泡に帰する。うーむ。
とはいえ。
今は最初の2話がリリースされたばかり。
気がつくとAmazonのボタンを押したい衝動と戦っているところだ。
困ったもんだ。
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