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2017/05/28

デヴィッド・リンチ『ツインピークス Season3』で死にそうになる。

赤い部屋だ。

そこにはデイル・クーパーがいる。
ローラー・パーマーもいる。

「赤い部屋」で、ローラ・パーマーはFBIのスペシャルエージェント、デイル・クーパーに向かってこう言った。
死んだ人間であるはずのローラ・パーマーが言った。


「25年後にもう一度会いましょう」



テレビシリーズから27年、映画から25年。
新シリーズの開始である。





『ツイン・ピークス Season3』最初の4つのエピソードを見た。
作品世界でも25年の時間が経過、クーパーは失踪したままだ。


デヴィッド・リンチ作品らしく、おそろしく魅惑的な新人女優が登場し、旧シリーズのおなじみさんも顔を出し、意味の分からない場面が連なってくらくらしているうちに4時間。
意味は分からないが、目が離すことができない。いや、離したくない。
ふつう、「わけのわからない映像」の連続だと視聴意欲が著しく減退し、しまいに腹を立てて観るのをやめてしまったりするものである。
ところが、デヴィッド・リンチの作品は目が離せなくなってしまう。
強烈な視覚的快感におそわれる。
これは、観る麻薬なのだ。



わずか2分の動画だが、『Twin Peaks Season3』の尋常ではない雰囲気がお分かりいただけるのではないか。
「わけのがわからないけど、すごい」というのはじゅうぶんにわかるのではないだろうか。
当然のことながら、こういうのが合わない人は、本編は見ないほうがいい。
デヴィッド・リンチが体質に合わない人は、相当な数いるだろう。

だけど、デヴィッド・リンチが癖になってしまっている人も相当いるだろう。
そういった人にとっては朗報だ。
強烈に効く、ドラッグだ。

これは何なのか。
と混乱しつつ目が離せなくなり、気がつけば4時間が過ぎた。間をおかず2周めの視聴に取りかかった。

わかったのは、これは18時間にわたってデヴィッド・リンチの脳内で繰り広げられるらしい夢とか妄想を極めて鮮明な映像で鑑賞する恩恵に与れるということだ。

クーパーは「赤い部屋」のある世界から抜け出して「現実世界」(おそらくだけど)に帰還したらしいが、かれは記憶を喪失しているらしいこと、クーパーのドッペルゲンガーが何人かいてひとりは消失し、もうひとりは警察に捕まっていること。
殺人事件が起こったが、頭部と胴体が別々の人物のものだという、奇怪で美しくてアーティスティックな死体が出てきたこと。
あとは、ほぼわからない。
なぜこんなものがしゃべっているのだろうとか、そういうことを延々書き連ねたところで、衝撃を伝えることが不可能だ。
裕木奈江も出ているが、困惑を禁じ得ないとしか言いようがない。

テレビ、ただしく言えばネット配信のために作られたドラマは、今では映画よりも制約が少ない表現の場になった。

最初の4時間で脳が映像の快楽に侵食されておかしいことになってしまった。

2017年に、デヴィッド・リンチの新作が18時間も見られる。
なんというすばらしい悪夢なんだろう。







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