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2017/05/13

『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』は完結できるのか?

2017年2月、『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』最初のイベント上映が行われた。
2回目は、4ヶ月後の6月末だという。

『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』は39年前の映画『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』TVシリーズ『宇宙戦艦ヤマト2』をリメイク/リブートするものだ。
TVアニメとして放映されることを想定して約24分のエピソード26本を制作する。初回上映はTVシリーズ2本で、以降は4本をひとつの「章」とし、26本を7回に分ける。
公開は数ヶ月ごとに2週間限定上映が行われる。
おそらくは2018年までの2年、もしかしたら2119年にずれ込む可能性だったあるだろう。3年にも及ぶ(かもしれない)、気の長いプロジェクトである。








『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』は、2つのレイヤーがある。
ひとつは、「今のアニメファンをターゲットにした新作アニメ」である。
もうひとつは、「古くからの『宇宙戦艦ヤマト』ファンを当てにしている作り直しアニメ」である。

『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』は、シネコンで上映するという「箔」をつけて、ほかの凡百のアニメとは違うのだと『ヤマト』の熱狂的ファンを焚き付けようとするものである。

『宇宙戦艦ヤマト』には、カネを使うのにためらうことのないファンがいる。
彼ら・彼女らの財布を開かせるのだ。
イベントとして大スクリーンで作品を上映し、気持ちよくBlue-rayやDVDや模型や書籍、その他マーチャンダイズ商品各種を買ってもらおうというのが趣旨だ。
ただの販促イベントだというのにカネを取る。
ほんらい、テレビを付けたらタダで見られるはずのTVアニメを4本シネコンのスクリーンにかけて、映画みたいな体でカネを取る。
悪意を以て表現すれば、「劇場用映画と錯覚させて買わせたい」とも言える。
宣伝もカネにするという、しかも宣伝して買わせようとしているのは、ほかの会社よりも割高に金額設定されたBlu-rayやDVDなのだ。

客を舐めている商売だ。
そう思わないだろうか。



                                              


『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』の収益の柱は「Blu-rayやDVDをやプラモデルや書籍やCDなど、商品を売って儲ける」だ。
Blu-rayやDVDをやプラモデルや書籍やCDを売るための話題作りとしてシネコンで2週間限定の「イベント上映」を行う。
この方法を始めた『機動戦士ガンダムUC』と『宇宙戦艦ヤマト2199』は成功を収めた。

重要なのは、このアニメ作品が想定するターゲットが好んで買い求めるBlu-ray・DVDをどれだけ売りつけることができるかだ。
想定ターゲットは40代以上50代までの、『ヤマト』へのロイヤリティが高いファンだ。
『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』が成功する/しないは、かれらがBlu-rayやDVDをたくさん買ってくれるかどうかにかかっている。

しかし、先行きはきびしい。
Blu-ray/DVDの売上を見てみよう。


○宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち(OVA) 【全7巻】

巻数    初動       2週計      累計     発売日
BD(DVD)     BD(DVD)    BD(DVD)
01巻 15,819(*4,986) 17,817(*6,081) 19,277(*6,968) 17.03.24 ※合計 26,245枚

○宇宙戦艦ヤマト2199 【全7巻】

巻数    初動       2週計      累計     発売日
BD(DVD)     BD(DVD)    BD(DVD)
01巻 15,908(*6,101) 18,484(*7,793) 28,854(12,061) 12.05.25 ※合計 40,915枚
02巻 19,372(*7,444) 21,025(*8,899) 27,171(10,955) 12.07.27 ※合計 38,126枚
03巻 19,851(*8,146) 21,706(*9,494) 27,166(*9,980) 12.11.22 ※合計 37,146枚
04巻 20,491(*8,124) 22,552(*9,609) 28,175(10,951) 13.02.22 ※合計 39,126枚
05巻 23,318(*9,597) 24,475(10,499) 28,340(12,211) 13.05.28 ※合計 40,551枚
06巻 21,872(*9,084) 23,953(10,738) 27,197(12,531) 13.07.26 ※合計 39,728枚
07巻 22,714(*9,536) 24,626(10,990) 26,140(11,977) 13.10.25 ※合計 38,117枚


『宇宙戦艦ヤマト2202』は、『宇宙戦艦ヤマト2199』と比較して約35パーセント売上枚数が減少している。
これはファンの数の減少を示しているのだろうか。
『2199』にはなかった、有料動画配信サイトからの高画質配信サービスに移行したファンがいるということなのだろうか。
動画配信の数字、売上などのデータは公になっていないのでなんとも言えない。
ただ、『宇宙戦艦ヤマト』の長年のファンは中高年層で、彼らはBlu-rayやDVDでの鑑賞を好む。もしくはBlu-rayやDVDをコレクションとして手元に置くことをよしとするので、実体のない配信サービスなど、好まないようにも思う。

今後、ファン=Blu-ray/DVD購入者が増える可能性はあるのだろうか。

ネットに上がっている予告編Trailer。
2017年6月上映予定の第2章『発進篇』だそうである。




この短い予告編と2月に公開/発売された「第1章」を観ると、『2202』は制作体制もスタッフも『2199』とは異なることがわかる。
はっきり言ってしまうと、作画もCGも演出も『2199』に比較してレベルが落ちている。
キャラクターデザインは踏襲しているが、微妙に崩れている。

今後、作画と演出の質の向上は見込めるのだろうか。

ゲームのデモムービー、それも10年以上もムカシのムービーみたいなCGぽい質感の宇宙戦艦「アンドロメダ」はなんだろうか。
ヤマトのノズルの形状を変更したのはいかなる理由があってのことなのか。
メカニック・デザインを主導する人が『2199』とは異なるのはどうしてなのだろうか。
『2199』のメカの描写は質も高く、評価も高かったのに継承しなかった。






『2199』よりも劣化している。
理由は、予算が充分に用意されていない。
金銭的もしくは信頼関係などの事由によって、前作で仕事をしたスタッフ、有能なスタッフが確保できなかった。
そんなところだろうか。

良くないシチュエーションだ。

『宇宙戦艦ヤマト2202』は、エピソード26本を7章に分割して、宣伝上映と同時にBlu-ray/DVDを販売するというのがビジネスの根幹だ。
この場合、「章」が評価されないもしくは酷評されると次の「章」のイベント上映の動員およびBlu-ray/DVDの販売の数字にもろ影響が出るだろう。

先行きはきびしい。
この作品はアニメビジネスのなかではメインストリームから逸脱しており、関心度は高くない。

Blu-ray/DVDの販売が不振に陥ったら、中断もあり得る。
利益を生まないビジネスが存続する謂れはないからだ。






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