検死医の親子のもとに若い女性の遺体が運ばれてくる。
その遺体は、むごい一家惨殺事件のあった家の床下で土に埋められていた。
身元を示すものがなにひとつない美しい遺体は、Jane Doeとして解剖される。
美しい遺体だった。
映画のなかで、Jane Doeはずうっと遺体のままだ。
司法解剖で遺体である彼女はからだじゅうにメスを入れられる。
『The Autopsy of Jane Doe』というホラー映画を見始めて、途中で後悔した。
解剖が静かに進められる。
地下にある、解剖室で。
少しずつ変異が起こり、じわじわ怖さが増していく。
かと言って途中で見るのをやめるのも嫌だ。
悲鳴が出ないように、口を押さえながら見た。
死体置場、無惨に損壊した遺体たち、解剖、近づく悪天候。
静かに迫ってくるもの。
地下の解剖室に、怖い気配が濃密になっていく。
それに惹きつけられて目が離せなくなる。
主役は若い女性だ。しかし、彼女はずうっと死んだままである。
死人だから言葉は発さない。
検死遺体だから、皮は切り裂かれ、内臓は摘出される。
映画の大半は司法解剖を描いていて、 ひどく損壊した死体、内臓を取り出す場面が生々しく描かれる。
肉体損壊描写が苦手な人にはオススメできない。
この映画は『ジェーン・ドウの解剖』という邦題で公開される。
ホラー映画の醍醐味は現実感覚の崩壊を味わえることだ。その点で、すばらしい(そして、おそろしい)怪異が味わえることを保証する。
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