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2016/09/30

恐怖に浸る快感。残穢【ざんえ】―住んではいけない部屋―

幼いころ、母の実家でよく夜を過ごした。


母の実家は大きな木造の家で、雨戸を閉めると真っ暗になる2階で寝た。
静かな中、ミシっと音が鳴ったりすると私はびくりとした。
廊下に明かりがなくて、トイレに行くのも怖かった。






寝付けないと、布団をすっぽりとかぶって目を閉じてなんとか寝ようとするが、幽霊が部屋の何処かにいることを想像して震えたりした。暗い空を漂っていた幽霊が、木戸と木戸の隙間から入り込んで浮遊している様子とか、近くの浜に佇む幽霊とか、色々想像していた。
『残穢【ざんえ】―住んではいけない部屋―』を見ながら、そんなことを思い出した。


中村義洋監督の『残穢【ざんえ】―住んではいけない部屋―』は、怪異を引き起こす【穢れ】を探すおはなしだ。
『住んではいけない部屋』が【穢れ】た理由を究明するおはなしだ。

『残穢【ざんえ】―住んではいけない部屋―』はホラー映画であると同時に、ミステリー映画として楽しめる。
作家である「私」は、読者の久保さんから届いた手紙に書かれた怪異に興味を持ち、調査を始める。
私たちは、「私」や久保さんとともに原因を探り、辿り、推理するのだ。
私たちは過去数十年を遡っていく。
私たちは、登場する数々の【穢れ】を知る。
建物が新しくなっても、そこに住まい人が変わっても、消えなかった何ものかに思いを馳せるのだ。
それは因縁とか、呪いとか、祟りだと呼ばれ、恐れられてきたものを知るということだ。

怪異は派手に描かれることはない。
中村義洋監督はとても穏やかで静かな語り口で語るが、その内容は怖ろしいことで、しかも耳を塞ぐことができなくなる。
中村義洋監督は、『ほんとにあった呪いのビデオ』シリーズでさまざまな「怖さ」を私たちに提示してくれたひとだ。
その手腕は冴えている。ほかのJホラー作品の、クリーチャーぽい表現、大きな音や急に挿入されるびっくりするような画像を使ったこけおどしのような場面はない。
静かに、じわじわと恐怖が滲み出てくる。
でも、目が離せない。
怖い。

はたして、【穢れ】は消滅したのだろうか?
映画のラストを見終わってからずっと、それを考えている。









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