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2012/07/07

宇宙戦艦ヤマト2199第2章「太陽系の死闘」見た

イベント上映に行ってしまった

「宇宙戦艦ヤマト2199」はTV放映でタダになったら見ようと考えていたのだが、ネットで配信された「第2章」冒頭9分の映像をうっかり見て煩悶し、新宿ピカデリーに行ってきた。
あのワープシーンを見ちゃったら、どうしても続きを見たくなったんである。つまり集客プロモーションにいとも簡単に引っかかっちゃったというわけです。
いささかの敗北感があるようなないような。


















いや〜、まいった。
面白かった。
あっというまに100分が過ぎた。
TVシリーズ4本、ワープテスト、木星の浮遊大陸、波動砲発射、ゆきかぜ発見、敵戦車・アンドロイド兵士との戦闘、冥王星ガミラス前線基地攻略・殲滅と、盛りだくさんの話が早いテンポで進む。
「第一章」もそうだったが、やたら情報量が多いのだ。
と思ったら、TV第1作では、冥王星基地殲滅は第8話だった。
6話までで8話分。
テンポアップされている上に、新しいエピソードや人物描写も加わっているのだ。ヤマト艦内のさまざまな場所が登場するのもいい。艦長室の階段、食堂はじめ緻密に設定された艦内の様子も楽しめる。艦載機に関する描写も見事だ。
詰め込みすぎという声もある。
現代だと、これくらいのスピードや情報量がちょうどいいかもしれない。
少なくともおれには快感と思えるテンポだった。

劇場用アニメとして作られた「宇宙戦艦ヤマト復活篇」よりはるかにデキがいい。
先行して成功した「機動戦士ガンダムUC」に倣って、質の高さ確保を第一にしているようだ。ただし、一部作画のばらつきは見られたけれども。

登場人物の描写も良かった。
敵味方問わず目が行き届いている。古代進は、TV第1作の「熱血キャラ」ではなくなっていて興味深い。真面目で誠実なキャラクターになった。また、古代進は群像劇のなかのひとりで、ちょっとだけ目立っている存在として描かれている。
そう、「宇宙戦艦ヤマト2199」は群像劇なのである。
新しい登場人物を含めて人物の造形や描写がていねいだ。
TV第1作では艦橋にいたキャラクター以外はその他大勢として描かれていたが、今回は様々な人物にも名前とバックグラウンドを与えて、しっかり描いている。
また、冥王星前線基地司令シュルツの描写も、肌色の違いをうまく取り込んだ設定になっている。TV第1作の彩色ミスを、「ガミラス帝星に制圧されて屈服した異星人」として合理化した。お見事。しかも、今後のストーリー展開の伏線にもなっていそうな気もする。

ほのかに松本零士リスペクトな描写があるのもうれしい。

「宇宙戦艦ヤマト2199」は再構築された作品である。
出渕裕が中心になって取組んだ<リ・イマジニング=再創造>作品である。

出渕裕は、1974年に放映された最初のTVシリーズに深く魅入られ、ヤマトのファンクラブで同人活動を始めた。
ヤマトに魅入られながらも若干の不満を抱いて、<こうなってほしいヤマト><自分の考えた宇宙戦艦ヤマト>をたえず想像していたおたくのひとりだったに違いない。
じつは初期おたくにはそういう人たちが少なからず、いた。
今でいう「二次創作」は、TV第1作直後から全国各地に現れた数多くの「ヤマトファンクラブ」の同人誌がその源流のひとつであると思う。そこには、<ぼくたちの考えた宇宙戦艦ヤマト>が描かれた同人誌がたくさんあったのだ。
出渕裕はそういった活動をしていた。
くわえて、SFファンとしてヤマトの描写の矛盾や設定の瑕疵に関して補完を試みてきた人だったと睨んでいる。
アニメファン、SFファンとしてのかつての思いが、「2199」にはストレートに反映していると思う。

ヤマト以前のアニメファンの活動というと、「海のトリトン」、「科学忍者隊ガッチャマン」ファンが盛んな活動をしていたと思う。両作品とも女性が熱心な活動をしていて作品解説の冊子、二次創作の小説などを発表していた。
ヤマトの登場で、アニメファンの活動が全国的な広がりを持つようになったと記憶する。





Galacticaとヤマト


邪推をもうひとつ。
「宇宙戦艦ヤマト2199」は、「Battlestar Galactica」のリ・イマジニングシリーズから少なからず影響を受けているのではないだろうか。
「Battlestar Galactica」のオリジナルシリーズは1978年に放映された。「スターウォーズ」の大ヒットを受けて制作されたTVシリーズ。莫大な制作費をかけたものの、人気は得られることなく終わったスペースオペラだった。
「ヤマト」は、地球を救うコスモクリーナーDを求める旅のものがたりだ。これに対して「Galactica」は機械化種族サイロンとの戦いに敗れた12の植民惑星の生存者が、船隊を組んで母なる惑星「地球」を目指す、旅のものがたりである。
「Battlestar Galactica」リ・イマジニングシリーズの基本的なストーリーラインはオリジナルと同じだ。しかし、設定や人物設定を大胆に見直している。
主役級の男性キャラクターを女性に変更したり、敵側に人間型サイロンを登場させたりした。メカのデザインも旧作を活かしつつ一新され、前作とは異なる新しいイメージを獲得している。
とくに、個々の登場人物を深く掘り下げてドラマに深みを持たせている。
おそろしくクオリティの高いVFX、太鼓などエスニックな音楽も取り入れた印象的なBGM、手持ちカメラで撮られているように絶えず揺れている画面はまるでドキュメンタリーを思い起こさせる。
人気作品となって、ミニシリーズ、4シーズンにわたるTVシリーズ、2本のスピンアウト、前日譚を描いたTVシリーズまで作られた。





当然、日本でも多数のファンとシンパを生んだ。 「宇宙戦艦ヤマト復活篇」「SPACE BATTLESHIP ヤマト」には「Galacitica」の戦闘シーンをパクった描写が見られる。微笑ましい。



「宇宙戦艦ヤマト2199」にも「Galacitica」に似た映像演出が見受けられる。 かつて「ブレードランナー」が<荒廃した未来>を見せて、後に多数のエピゴーネンを生み出した。同じように、「Battlestar Galactica」リ・イマジニングシリーズ以降に作られた宇宙ものSF映像作品はこの作品の影響を受けている。 「宇宙戦艦ヤマト2199」は、とくに作品作りの考えかたや手法でかなりの影響を受けているのではないだろうか。 リ・イマジニングという考え方。オリジナルを尊重した上で、現代的な要素をたっぷり盛り込んでストーリーを再構築するという手法。 キャラクターの再構築。人物の造形と掘り下げ、群像として描く方法。 「軍隊らしい」描写。 テンポ、情報量の多い映像づくり。 作品づくりのベーシックなところでお手本になっているのではないか。 ところで「Battlestar Galactica」リ・イマジニングシリーズって、「マクロス」や「伝説巨神イデオン」の影響が色々と見られる。戦闘シーンやクライマックスにおや?と思うシーンが出てくる。ああ、イデオンを実写でやってる、っていうような場面も。 スタッフには日本のSFアニメファンが多いようだ。 あ、そういえば「マクロス」は、「Galactica」オリジナルシリーズの影響を受けたとも言われてるんだった。 まあ、押井守いうところの「日米パクリ合戦」であって、結果、いい作品が見られるならいいことじゃないですか。おたがいにリスペクトもあるし。 そういうわけで、面白かった。  

しかし、若い世代は食いつかない

若い人には受けないアニメだな、と思う。
関心持つ者も少ないんじゃないだろうか。
現に満員になった映画館は中高年ばかりで、若い世代も女の子もいなくて、中高年の男女ばかりだ。
たまたまおれが足を運んだ回だけなんだろうか?
いや、中高年代以外の世代では話題にはなっていない。

かれらは「人類救済のための想像を絶する苦難の旅」のような<大きな状況>を描く物語に関心を持たない。
16万8千光年の壮大な旅を描く<ロマン>など、若い世代は受容しない。
「エヴァンゲリオン」のような世界の危機と内面の問題が同じ比重で描く作品が人気を勝ち得てのち、ロマンの権化のような松本零士は過去のものとなってしまった。
今にいたっては<日常>を細やかに描くという作品がもてはやされる。軽音楽部の女の子たちのはなし、のような。

実際、劇場に足を運び、DVDやブルーレイを嬉々として購入する中高年は、「宇宙戦艦ヤマト2199」を鑑賞しつつ、かつて見たTV第1作を追体験している。イベント上映の劇場はそういった連中が席を占めている。リビングの片隅では、家族が寝静まったあとで静かに鑑賞に勤しむ者も多いだろう。
はしゃぐ中高年を訝しげに、もしくは冷ややかに見ている若い人も多いことと思う。

でも、大時代的なロマンの面白さを理解してくれる若い人が少しでもいいからいてくれたら、と思う。
などと書いてると、なんか先行する世代の方々が「日活無国籍アクション映画」の面白さをくどくど説いているみたいだな。
うーん。


おれは、出渕裕による<宇宙戦艦ヤマト再構築>を全面的に支持する。
大胆な再構築をしてもらいたい。TV第1作をそのままトレースして、きれいな絵で仕上げましたよ、というのでは面白くもなんともない。
旧作にはなかったエピソードを加えることも諸手を挙げて賛成する。


今後の「宇宙戦艦ヤマト2199」がどうなろうと、見届けたい。


ちなみに、「第1章」もDVDを買い求めて、見た。ブルーレイの環境がないので。
結局、貢いでる。
やれやれ。

1 件のコメント:

  1. 私はヤマトもエヴァもリアルタイムでは見ていないぐらいの「若者」ですが、2199、毎週楽しみにしているところです。
    視聴のきっかけはエヴァの庵野監督です。
    「エヴァ」はおっしゃっているような俗に言う「セカイ系」の側面もありますが、やはり発射・起動シーンのヤマト分が含まれていることも魅力の一つじゃないかな、と。「ふしぎの海のナディア」のN-ノーチラス号発進シーンはまんまヤマト発進のオマージュですし。

    bobbieさんの考えていらっしゃる「ヤマトらしさ」と違っていたらごめんなさい。

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