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2017/02/05

年寄り向けリメイクアニメや特撮系実写市場って幻かもしれない。

<中高年・老年アニメ市場>もしくは、<中高年・老年特撮系実写市場>ができているのではないか。

『宇宙戦艦ヤマト2199』のヒットをみて、そう思った。
<中高年・老年アニメ市場>は間違いなく、ある。
Blue-ray・DVDがよく売れ、TVシリーズも高評価で総集編映画と、ヤマトの地球への帰路での出来事を描いた『星巡る方舟』という劇場版新作も制作された。
これは、成功と言っていい。



だが、むずかしい市場だ。
とてもむずかしい市場だと思う。

そもそも、<中高年・老年アニメ市場>もしくは、<中高年・老年特撮系実写市場>などというものがあるのか。
はたして中高年は、喜々として自分が若い頃に見たアニメや特撮の新作を見るのだろうか。





昔、大ヒットしたTVアニメや特撮ドラマを再度作ったものはけっこうある。
 
昔、そのTVアニメや特撮系実写ドラマ・映画を見ていた人に、また見てもらってBlu-rayやDVDを中心に版権使用商品を売りつけて儲けようというビジネスである。
映像化作品の原作枯渇という問題。
有名作家/作品のほうがお客さんを呼びやすい。
高齢化社会なので、ほんらいは子供向けの商売が主体だった映画、ドラマ、玩具、DVDなどのビジネスが中高年を新しいターゲットに定めた。

そういう事情はあるだろう。

ところが、成功するとは限らない。
ちょっとリメイクだとかリブートとかして失敗したと思われるアニメや特撮を挙げてみる。

『銀河鉄道999 イターナルファンタジー』
『サイボーグ009』
(映画『009 re : Cyborg』、OAD『サイボーグ009 VS デビルマン』、ネット配信『CYBORG009 CALL OF JUSTICE』)
『デビルマン』
(『サイボーグ009 VS デビルマン』)
『キャプテン・ハーロック』
『ガッチャマン』
『キカイダー REBOOT』
『宇宙刑事ギャバン』
『キューティーハニー』
(『CUTIE HONEY ーTEARSー』)
『仮面ライダー1号』

知らない、と言う人も多いんじゃないか。
どれもあまり世間に知られないうちに、事実上消えてしまった作品ばかりだ。
世の中の大半の人は、リブート作品には関心も向けないし、そんなニュースも知らない。

『銀河鉄道999 イターナルファンタジー』から『キャプテン・ハーロック』までは、松本零士、石ノ森章太郎、永井豪というビッグネームは「過去のもの」で、その代表作もまた、同じだということがわかった。
具体的には、それらにお金や時間を割きたいと思わない人がほとんどだということ。

『ガッチャマン』から『CUTIE HONEY ーTEARSー』までは、アメリカのヒーローモノ映画の悪影響を受けている。
クリストファー・ノーランの『ダークナイト三部作』や、マーベル・シネマティック・ユニバースと銘打たれたヒーローもの映画がヒットしたので、日本にも「大人向けの特撮市場」があるのではないかと勘違いした制作者が大慌てで創ったお粗末な模造品だ。
バットマンやマーベル・ヒーローといった、古いアメコミのヒーローを「再定義」して「再生」し、新しいファン層を開拓するために、プロデューサーも監督も脚本家も役者もどれだけ腐心したことか。
脚本をちゃんと作り、それを丹念に映像化していく。
「ヒーローが活躍すること」と「現代という時代」を両立させるために、時間と知恵とカネをかけているのだ。

ひるがえって、日本。

東映の特撮モノはTVシリーズの片手間に、まったく吟味した痕跡がない脚本で早撮りしてCGを適当に使って創ったものにしか見えない。
脚本の質を高めることに無関心なのはどうしてなのか。

『仮面ライダー1号』は、「藤岡弘、講演会」を映画というフォーマットに偽装してやっているもので、そういう意味では一見の価値があると言えないこともない。
ふしぎな恋愛映画でもある。
レンタルDVD屋で借りて、「観たことのない」感じを味わってみるといいと思う。




なお、個人的に『009 re : Cyborg』は好きな映画だ。
『サイボーグ009』の「天使編」という、石ノ森章太郎が投げっぱなしにしたまんまだった作品をモチーフに、結末まできちんと描いていて、飽きずに観た。
ただ、フル3Dで作られており、マンガ原作の絵とまったく違ったキャラクターデザインで親しみが持ちにくい。



映画を観終わって、絵柄の変更について考えた。
原作漫画『サイボーグ009』を読んでいた人たちは、『009 re : Cyborg』の画を見ても、『009』であると認識できないのではないだろうか。キャラクター・デザインの変更によって昔からのファンを逃していやしないか。
そんなことを考えた。

リメイク作品、リブート作品がうまく行かない原因は、単純である。
「観る価値がある」と思われない。
それに尽きる。
映画館に行くとか、有料配信で観てみるとか、DVDを買う/借りると言ったアクションを起こそうという気持ちにならない。

今後も、リメイク/リブート映像作品は出てくる。
どうなるだろうか。
中高年は、可処分所得が多いから、趣味嗜好にお金を回せる。
そう踏んで、昔のアニメや特撮をリブートしたり、昔の作品をデジタル修復してキレイに直してBlue-rayを販売するというビジネスが次々出てくるだろう。
しかし、日本は一部階層を除いて、貧困に向かいつつある。

5年後、10年後でも可処分所得の多さに期待するビジネスは残るのだろうか。


はて、『宇宙戦艦ヤマト2202』はどうか。




世界の行末をかけた戦いは体育館で。

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