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2016/07/20

考えるな、感じろ。『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』

かつて、『さらば宇宙戦艦ヤマト』というアニメ映画があった。

前作『宇宙戦艦ヤマト』では、地球はガミラスの遊星爆弾によって放射能汚染され、海も川も干上がってし、滅亡まであと1年と迫った。
『さらば宇宙戦艦ヤマト』では、地球がわずか2年で復興したばかりか、みんな繁栄に酔いしれて苦難を忘れているという描写があった。
世界の瀬戸際にあった世界が、たったの2年で復興し、繁栄を謳歌して堕落するというのだ。
時間や復興に関する観念がまるで異なる。
というよりも、ご都合主義のデタラメである。

『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』が公開された。
観にいって思い出したのが『さらば宇宙戦艦ヤマト』である。

地球は、20年前の1996年に異星人の侵攻によって人類の半分以上を喪った。
しかし、わずか20年後には復興して繁栄し、月面だとか木星の衛星に基地を作る。 『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』は、そういう世界だ。

『インデペンデンス・デイ』世界は、『さらば宇宙戦艦ヤマト』世界とつながっている。
前作の『インデペンデンス・デイ』のクライマックスでは、飲んだくれのパイロットが巨大円盤に特攻して反攻の突破口になるという下り場面がある。
これも、『さらば宇宙戦艦ヤマト』でヤマトが白色彗星帝国の超巨大戦艦に特攻をかけるクライマックスを連想させる。
若き大統領が、大演説をブッて自ら戦闘機に乗って異星人と闘うというのも、トンパチながら「愛」についていきなり演説をぶってみせた古代進につながる。






『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』が公開された。
1996年、30億人を死に至らしめたエイリアンの侵略があった。

それから20年後。
国連は地球外からの脅威に対する防衛組織として地球宇宙防衛軍を設立した。
率いるのは、ジェフ・ゴールドブラム演ずるところのデヴィッドである。
かつて、マッキントッシュのパワーブックでエイリアンを撃退して見せたデヴィッドが地球防衛の要となったのである。 人類はエイリアンから得たオーバーテクノロジーで武器や戦闘機などを開発し、地球防衛システムを構築して、その技術力は月面に基地を作るまでとなった。 しかし、エイリアンたちは地球を再び侵略する準備を着々と進めていた。 彼らは直径3000マイル(約4800km)の超巨大宇宙船とともに地球に侵攻してきたのだ。







撃墜したUFOから得たテクノロジーで、月と地球間を行き来する戦闘機や輸送機が登場したあたりで、首を傾げてしまう。
『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』の世界も2016年だが、スクリーン前にいるわれわれとは隔絶した世界である。

で、観始める。


「考えるな、感じるんだ」

ブルース・リーは、カンフーの極意をそう表現した。
ローランド・エメリッヒの映画の極意もまたそうである。

考えてはいけない。

スクリーンに映っているものを知性でもって解釈しようとしてはいけない。
スクリーンで展開される光景を感じるのだ。
3Dで見れば、遊園地のアトラクションみたいに楽しめる。
しかし、あとには何も残らない。アトラクションの代金として高いと感じるかそうではないか。

これまでのローランド・エメリッヒのディザスター映画がそうであるように、世界が大変なことになっていることの深刻さは伝わってこない。
VFXの進歩がわかる映像ではあるが、巨大な災厄を前にした人間については事務的に描かれるのみだ。
直径3000マイル、北米を覆ってしまうほどの超巨大円盤を作れるエイリアンだが、最終的には昆虫ぽいというか怪獣ぽいというか、デカイのがものすごく頭の悪い戦いをして負けて終了。

この映画の見所は、ただひとつ。
世にも美しいアンジェラベイビーである。

というわけで、急いで映画館に行って、アンジェラベイビーにうっとりするべきだ。


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