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2016/02/10

平井和正 | 『幻魔大戦』全20冊合本

平井和正は2015年1月17日に世を去った。
早いもので、1年以上経った。

平井和正は『ウルフガイ・シリーズ』『アダルトウルフガイ・シリーズ』で多数のファンを獲得、SF作家として異彩を放つ存在だった。
女性ファンも多数いた。とくに『ウルフガイ・シリーズ』の、過酷な運命に翻弄される少年犬神明と女性教師青鹿晶子に注目する女子は多かった。
ファンは熱狂的に支持して大量にファンレターを送り、作者はファンレターにていねいに返信をし、「世界一読者からのファンレターに対する返信を書いた作家」と平井和正はジョークを書いたほどだ。
登場人物のファンたちがファンジン発行したりして、今に続くファン・フィクション=二次創作の源流となった。

ところが、平井和正は『ウルフガイ・シリーズ』『アダルトウルフガイ・シリーズ』の創作を中断する。
そして「言霊が降りてきたので」『幻魔大戦』『真幻魔大戦』を猛烈な勢いで書き始める。
その作風はそれまでの平井和正の作風とは大きく異なり、ファンが総入れ替えとなった。『幻魔大戦』は角川書店の文芸誌『野生時代』に一挙掲載ののちに文庫本で発売、『真幻魔大戦』も徳間書店の『SFアドベンチャー』に連載もしくは別冊とか増刊に一挙掲載ののちに新書判、のちに文庫本発売となった。
これが売れに売れまくった。

それも今は昔のことだ。
アマゾンを覗いてみると、『幻魔大戦』が電子書籍で出ている。それも、20冊の文庫版の合本というものがあった。



9,936円。
値段だけを見ると、ちょっと高くないかと思う。
電子書籍=安価という先入観があるから、そう思うんだろうか。




『幻魔大戦』は、1巻から20巻まで、バラ売りもされている。一冊、500〜600円。合本を買うと、ランチ1回分くらいは得する。 セールスマンのセールストークみたいになっちゃった。

『幻魔大戦』というと、全冊合計で2000万部売れたという凄まじさなのだが、今本屋に行っても入手できるわけではない。
あれほど売れた記録的な本なのに、本屋にはない。
平井和正のコーナーすらない本屋がほとんどだ。



平井和正。

平井和正は、あまり世間で知られていない名前だ。
いや、すでに忘れ去られた名前となっていたという方が正しいのか。

なので、2015年1月17日の逝去の報はさして大きな話題にもならず、追悼のブックフェアなどもなく、評伝などの出版もなく、1年が過ぎていった。
すでにほとんどの人の頭から「平井和正」の名は消えてしまっていた。

『幻魔大戦』は、かつて累計で2,000万部を突破する売上を記録した本だというのに、紙の本は入手が難しい。
出版社を何度か変えて出続けていたがそれも途絶えた。
文庫本が新刊では買えない。
古本屋を丹念に回って揃えるか、ネットで買うしかない。
平井和正の本じたい、新刊書店にはない。
古本屋を回る、もしくはアマゾンで中古本を買うしかないという有様だ。
あと10年くらい経過したら、いま平井和正の本を持っているファンのなかから物故者が出てきて、蔵書が中古市場に出回ることもあると思う。
だけど、その時に

『幻魔大戦』のKindle版は、文庫本20冊分と考えたらかなり安いのかもしれない。
しかし、スマートフォンやタブレットにダウンロードして読むには躊躇する値段だ。
以前、神保町の古本屋の店頭では1冊50円とか5冊100円で売っていたように記憶している。
『真幻魔大戦』は紙の本は絶版のままである。2016年の3月にやっとKindle電子書籍版『真幻魔大戦1 超意識との邂逅 』の刊行が始まる。
シナリオノベルと称した『ハルマゲドンの少女』、続編の『ハルマゲドン−第二次幻魔大戦』は今のところ電子書籍化されていない。読むとしたら古本屋を漁るしかないようである。
さらなる続編『幻魔大戦deep』は電子書籍になっており、『幻魔大戦deep トルテック』はバカ高いCD-ROM版電子書籍とバカ高い単行本が出ている。

形としては、読もうと思ったら読める。
しかし、いったい誰が読むのかというのはある。
かつての読者で、ふと懐かしくなったからという理由で買う人はいるかもしれない。
でも、新しい読者は付くんだろうか。

平井和正と『幻魔大戦』については以下のまとめを読むと把握できる。


1976年六月、わたし→平井和正は、新宗教の魅力的なカリスマにいかれ、側近となった途端、仲間の側近たちの激しいイジメにあい、カリスマの唐突な心変わりによって、幻滅し、宗教なんて××だと思い知らされたマントヒヒだ。
 しかし、転んでも只では起きまい。必ずや宗教とカリスマの恐るべきイカガワシサと偽善性と、そして狂信者たちのアホさ加減を、小説化してやろうと心に誓って、再起した。
 それが本書「幻魔大戦」なのだ!


並行する世界でのおはなしとして書かれた『真幻魔大戦』も3月から電子書籍版の刊行が始まる。


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