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2014/03/21

「ほんとにあった呪いのビデオ」が好き。

私は、霊が映っている映像が大好きだ。 
                                       
日常では目にするはずがない何ものか、異形の存在がふと出現する様子に興奮を覚える。
その興奮を味わいたい一心で、心霊映像と名のつくものに片っ端からあたっている。
映像の中に出現し、動き、消える幽霊。
それがポイントだ。

ビデオに映りこむ幽霊が増えている。
もとい、幽霊が映りこんだビデオが増えている。
 
まさかこれは、ビデオカメラが安くなって普及、さらには動画録画機能が付いたスマートフォンの登場による効果だとでも言うのだろうか。

レンタル用DVDのなかで、「心霊もの」「実話怪談」って人気が高いのではないだろうか。コーナーにはたくさんのタイトルが並んでいる。

心霊者は、動画の時代である。
ビデオカメラや、動画を撮影できるスマートフォンやデジカメが普及しているからなのか、「霊を捉えた映像」が次から次へと出てくる。
「心霊写真」は主役の座を動画に譲った。写真の片隅にぼんやりと何者かの顔らしきものが写っている、そんなものではなく、霊たちは動画のなかにゆらりと出現して人を驚かせるようになったのだ。
私は、そういう映像を見るのが好きなのだ。
とても臆病なのに、見てしまう。
顔を手で覆って、指のすき間から怖い映像を見て、悲鳴を飲み込みながら見ている。

なかでも、シリーズが55本、総集編やエクストラを含めると60本を超える、「ほんとにあった呪いのビデオ」が大好きだ。



本投稿はお祓いを済ませておりません。
かつて幽霊は人のおはなしの中で語られる存在だった。話を聞いたものは、各々が想像をめぐらせて幽霊の姿を思い描いた。

カメラが発明されると、幽霊は写真のなかに写るようになった。語るだけの存在だったものが、<姿>を持つようになった。
カメラが普及すると、幽霊が出現する機会が増え、様々な場所で幽霊の姿が写真に写りこむようになった。その姿のほとんどは曖昧なもので、それが逆に想像力を刺激するものであった。

曖昧な写真だから、リアリティがあった。






私たちは写真を手にし、木陰やら暗がりやらを見ては、人の姿のように見えるだとか、顔のように見えるだとか想像をめぐらすのである。
<心霊写真>は、それが楽しかった。

しかし、昔から、交霊会に出現し、他人のエクトプラズムを借りてはっきりと姿を現した女の幽霊だとか、人の顔とはっきりわかるとかそういうものはトリック写真だと疑われることが多い。


http://ww5.tiki.ne.jp/~qyoshida/sinrei/102shashinshu.html


http://matome.naver.jp/odai/2132712642142157401


















<心霊写真>は、それが楽しかった。

そして、幽霊が動画に映りこむ時代が到来した。

ビデオカメラが普及し、デジカメやスマートフォンで動画がカンタンに撮影できるようになって、自分の子供や友人、自分が参加した行事などを撮影した動画にかれらが映るようになった。

街やビルに設置されている監視カメラにも、自動車に付けられた車載カメラにも、かれらの姿が映りこむ。
動画のなかでいかにも<幽霊>らしい姿のかれらを見ることができる。

 わたしはそんな動画を夢中で見ている。ときおり、怖くなって顔を手のひらで覆って、指の隙間からかれらの異形の姿をちらちらと見る。ときに背中がぞくりとして、それは快感である。

 心霊映像を集めたDVDタイトルは数多く出ていて、レンタルDVD屋の棚を占拠しているが、なんといっても「ほんとにあった!呪いのビデオ」がいちばん面白い。

「ほんとにあった!呪いのビデオ」の構成は、いたってシンプルである。
スタッフ宛に送られてきた投稿映像を紹介、どこにどのような<幽霊>が映りこんだかを解説する。
とくに怖い映像や何やら因縁があるような投稿はスタッフが取材をして、心霊映像のくわしい背景を探る。取材が長きに及んで、巻をまたいで継続することもある。

シンプルな構成に、ナレーションがよく合っている。
それは、こんな調子である。

それでは、送られてきた映像をご覧いただこう。
窓の外に女性と思われる何者かが現れては消えるというのだが。
これはまさか、かつてこの場所で殺された女性が姿を現した、とでもいうのだろうか。

「ほんとにあった!呪いのビデオ」の大きな成功要因と思われるのが、このナレーションだ。
中村義洋の淡々とした語り口がかえって怖さをかきたてる。 中村義洋は本職は映画監督で、「ほんとにあった!呪いのビデオ」シリーズ初期には演出を担当している。




先述のように、ビデオカメラの氾濫によって<幽霊>が映像に映りこむ機会は大幅に増えている。そのせいなのか、「ほんとにあった!呪いのビデオ」のリリースの間隔も短くなってきている。おそらくは投稿される動画の数も増えているのだろう。

自分の住んでいるアパートを母に動画で紹介しようと、ケータイで撮影する女性。窓にケータイを向けるとカーテンを背に黒くて不気味な女が佇んでいる。撮影者はケータイを放り出して逃げる。画面はブラックアウト。すると、真っ暗な画面に赤ん坊の泣き声のような不気味な音声が聞こえる。

結婚式場、ケーキ入刀の晴れやかなシーン、新郎新婦の背後に出現する、モノクロームの女。

韓国料理店で開かれた仲間うちの歓送会にまぎれこみ、不気味な笑みを浮かべて見せる女。彼女は瞬時に移動して不気味な笑顔を見せる。

姉と弟がビデオカメラでお互いを撮りっこしている。
ベランダからガラス越しにこちらを覗き込む謎の女。弟は恐怖に駆られてトイレに逃げ込む。パニックに陥った姉は必死になってトイレのドアを叩き、叫ぶ。

泊まり込みの企業セミナーに現れた、灰色の女。最初は窓の外から部屋の中をうかがっているが、瞬時に移動し、室内にいる者の背後に立つ。

夜、社員旅行の一行が旅館の一室でふざけている。ベランダの向こうには、闇を背景に白い着物姿の女が立っている。

温泉旅館のとある部屋、若い女性たちが楽しそうに話をしながら、携帯電話でその様子を動画で撮っている。うちのひとりの女の子の携帯電話に着信する。誰からの電話かは不明だ。直後、彼女の背後には泥で汚れた着物姿の少年が出現する。

高速道路を走るクルマ。左手の道端に立つ男。
しばらくすると、同じ姿格好の男が立っている。
男は何度も出現する。

心霊映像というと、眉をひそめる人が少なからずいる。

「霊に見えるというのは、気のせいではないのか。影とかそういうものが人の顔や姿に見えるだけなのではないか」
「もしかしたら、やらせではないのか」
「本物であるはずがない。最近では、パソコンを使って映像の加工や合成がカンタンにできるじゃないか。幽霊などたやすく捏造することができるだろう」 
「そもそも霊など、いるはずはない」                                                                そういう声は多い。

しかし、私は「ほんとにあった!呪いのビデオ」を見るとき、そういうことは一切気にしない。
はっきり言って、<ほんもの>であるとか<にせもの>であるとか、どうでもいいことである。
モニタに映るまんまのものを見ては、その怖さを愉しんでいる。
「怪談として語ることができる体験」は何度かしている。しかし、霊とか死後の世界とか、そういった類を信じているわけではない。
あなたが良識的で常識を信じる人間であるのであれば、「ほんとにあった!呪いのビデオ」を代表としてレンタルビデオ屋の棚をけっこう占めている心霊ものビデオは見ない方がいいと思う。あなたには、許容できない映像だろうから。

そこにいるはずのないもの。

かつてそこにいたことがある、何者か。それがうごめくさまを見つつ想像を巡らせることは、とても怖い。

しかし、楽しい。

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