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2017/10/31

客が逃げていってるぜ。『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』

この投稿のタイトルがすべてかもしれない。
数多い『宇宙戦艦ヤマト』ファンに不誠実極まりない。

それが、『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』第3章・純愛篇だった。









『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』は、TVシリーズ、それも予算が少ない質の低い作品を高いカネ取って見せてやがる。
そのようにしか思えない。

大成功を収めて評価も高かった『宇宙戦艦ヤマト2199』続篇。
『宇宙戦艦ヤマト2199』は旧作を尊重し、松本零士にも敬意を表し、旧作の矛盾点や問題点を丹念にカヴァーし、科学考証もしっかり行い、作画も美しかった。

だというのに、『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』はその美点は受け継いでいなかった。お話は雑で科学的な考証もなんのそので面白くもなんともない。
作画も、ふた昔くらいまえの、予算も制作スケジュールもきつくて作画が荒れてタッチもコロコロ変わったTVアニメを思い起こさせる。

約24分のTVアニメ4本を見るのに、

映画館では1,500円。
ネットの有料配信サービスを利用して視聴するには、3,800円。
Blu-rayで見るには映画館で売られている限定盤だかが1万1千円。
普通盤のBlu-rayが約7,000円で街なかのショップで買えば9,500円。

お金と手間がかかる。

それだけの価値があるんだろうか。
この作品は、前作『宇宙戦艦ヤマト2199』の主要スタッフが参加してない。
手腕の劣る人材ばかりで創ってる。







問題は何か。

予算の問題か、制作スケジュールの問題か、スタッフ間の人間関係か。

何らかの不調の要因があって、作品の制作体制はすでに崩壊しているとも思える。
作品をまとめ上げて、破綻のないものにするまとめ役がいない。
それがプロデューサーであれ、脚本家であれ、演出家であれ、作品の「品質管理」ができる人がいないようだ。
作品を統率し、スタッフを強く引っ張って導く人もいない。

だからストーリーも人物描写も、メカ描写も、作画もCGの使い方もひどいものだ。

制作体制の崩壊についてあれこれと邪推するのはおもしろいが、その結果目の当たりにしている悲惨な現状は笑えないできごとだ。

最大の問題は、「マーケティングの不在」である。
プロデューサー以下、スタッフ陣は『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』を誰に向けて創っているのだろうか。
誰をお客さんと考えているんだろうか。

それがさっぱりわからない。

他のアニメや映画、海外テレビドラマの剽窃があからさまだ。
とくにアメリカのTVシリーズ『ギャラクティカ』の影響は強い。
『ギャラクティカ』は、人類に反旗を翻した機械生命体と人類の相克を描いていて、2001年の同時多発テロ、その後のイラク戦争を反映したハードな内容の作品だが、その上っ面を模倣している。
この作品の魅力のひとつは、日本のアニメを引用したとも思える戦闘シーン、迫力のある砲撃シーンなんだが、その辺を模倣しない。
というか、できない。
JJエイブラムスのプロデュース作品に顕著な「可能に伏線を張る」「謎をぶち込めるだけぶち込む」も模倣してるようだけど、回収できるんだろうかと思う。
アメリカのTVシリーズぽい「謎と伏線だらけ」を、『ヤマト』ファンは喜ぶのだろうか。

常識的な判断で言えば、昔からの『ヤマト』ファンがコアな客層だと思うが、制作者たちは、現場のスタッフたちはそのようには考えていないんだろうか。
40年もファンを続けている人たちは、ネットを通じて『ヤマト』に対する意見や要望を表明し続けているが、そういったものを参考にしないのだろうか。
ファンが考える『ヤマト』像について、リサーチしなかったんだろうか。

コアなファン層は『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』をどう思っているんだろうか。
『ヤマト』の名を冠しながらもほかのアニメを連想させるエレメントを混ぜ込み、下手くそな画どうしようもない演出で見せられることをどう考えてるのだろうかと思う。

『宇宙戦艦ヤマト』ファンの多くは、サイレントマジョリティだ。
ネットなどで主張することもせず、Blu-rayやDVDや各種のキャラクター商品などを買ってファンとしてのロイヤリティを示してきた。
良きファンは作品に触れてデキの悪さをおおいに嘆くが、外に向かっては何も意見を言わず、以降はBlu-rayを買わず、配信も見なくなるという行動で「否定」という意思表示をするだろう。
つまり、顧客が離脱していくことが予想できる。
顧客が離脱した場合、この作品の儲けのほとんどを占めるであろうBlu-ray・DVDの売上が著しく低下してしまうのだ。
そうなれば、『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』はビジネスとして成立しなくなる。

2ちゃんねるとか公式の掲示板とか見てもごくごく一部のアクティブな人たちが繰り返し投稿してる。投稿の数は『宇宙戦艦ヤマト2199』の頃と比べると、著しく減っている。
アクティブなファンですら減ってしまった。
 危機的な状況にあるのではないだろうか。

「お客さんは誰なのか」をしっかりと精査して認識し、その客さんたちはどういった『ヤマト』が観たいのか、どんなストーリーが好きなのかをリサーチして、その結果を反映したシナリオを開発するべきだった。


『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』の残りは16話で、残り4回の上映が予定されている。

完走できるのだろうか。

最初のTVシリーズ『宇宙戦艦ヤマト』や52話の構想が頓挫してしまった『宇宙戦艦ヤマトⅢ』のように打ち切り・短縮という結末になりはしないか。

『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』は「第3章・純愛篇」でかなりの客が離反してしまった。
その結果として制作環境がもっと悪くなり、スタッフのモチベーションも低下、離反が起きて作品の質がさらに下がる。
そういったことを危惧しないでいられない。

最後に、『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』制作に関わる人たちに質問したい。
『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』のネット配信、Blu-ray/DVDはなぜほかのアニメ作品よりも高額なんですか。
高額なのに、タダで視聴できるTVアニメよりも質が悪い、画が荒れて統一性がなくて演出も粗雑なのはどうしてなんですか。

なぜお話が破綻しているんですか。
誰に、何を見せたいんですか。

何よりも、お話、面白いですか。




「ガトランティス」の設定はSFTVシリーズの最高峰『ギャラクティカ』の剽窃である。
この作品は、人類と、人類が創造した機械生命体〈サイロン〉との闘いを描いている。過酷な逃亡、巨大戦闘空母による砲撃戦、SFマインドを刺激する緻密な設定、そこはかとなく感じられる『伝説巨神イデオン』の影響・・・
『宇宙戦艦ヤマト2202』に尻込みした人に、おすすめしたい傑作。





2 件のコメント:

  1. ホントそう思います。旧作の駄目な点を2199は上手くアレンジしてリアリティあるSF作品として復刻してくれましたが、2202では完全にちゃぶ台返しされた気分になりました。話雑すぎて付き合いきれません。出渕監督は今、どういう心境でしょうか…

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    1. 出渕裕監督は、続篇のないように、この上なくキレイに『2199』を完結させたのが見事ですね。
      『さらば宇宙戦艦ヤマト』から『復活篇』に至る惨状を繰り返したくはなかったでしょう。
      『2202』はカネに見合う質の良いものを提供すべきでした。もう遅いかもしれませんが。

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