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2016/04/20

粘液とゴア描写とクリーチャーぽさと『仮面ライダーアマゾンズ』

『仮面ライダーアマゾンズ』というドラマがある。
複数形になっているのはどうしてなのかと思ったら、「仮面ライダーアマゾン」が複数出てくるからだという。

アメリカの有料動画配信サービス、NetflixやAmazonビデオに刺激されたのだろうか、ネットオリジナルドラマが日本でも出てきた。

あ、ちがった。
大昔、1回1分で365日配信の『グラウエンの鳥籠』というものがあった。
アスキーのサイトで配信していたのだった。主演は吉野紗香、秋元康が関わっていたと思う。同じタイトルのゲームも出ていたんじゃなかったか。ゲームの販促として作られたドラマだったんだろうか。

ネット配信ドラマはカネになるんだろうか。




『仮面ライダーアマゾン』という、仮面ライダーの中でもけっこう昔の異色の作品をネタにして作りなおしをするというのだ、はなっから新しい客をつかもうというつもりがないのはよく伝わってくる。Amazonビデオで配信する最初だから、アマゾンというのもあるだろうけれども。
若いひとがAmazonビデオに手を出すとは思えない。
年取っててPCを使ってる、古くからの仮面ライダーファンが金を出してくれることを期待しているドラマだ。
『アマゾン』と言ってわかるひと、わかるよね、ぜひ觀てみてね。

そういうところだろう。



アマゾンとは、野座間製薬の研究で生まれたウイルスサイズの人工生命《アマゾン細胞》集合体である。
2年前、野座間製薬研究所で起きた事故により、約4,000体ものアマゾン実験体が街に解き放たれた。クモやモグラ等、様々な種類のアマゾンがいる。
アマゾンのなかには、ヒト型に成長したものもいる。
ヒトのタンパク質を摂取する習性があり、多くのアマゾンは人肉食を行う。
野座間製薬は、アマゾンを駆除する必要があった。

ふたりの仮面ライダーアマゾンと製薬企業の、アマゾンを巡る暗闘の物語が『仮面ライダーアマゾンズ』である。
アマゾン実験体のひとりが、<仮面ライダーアマゾン>となる。<天然>の仮面ライダーアマゾンがそれに絡む。

『仮面ライダーアマゾンズ』、本格的な有料ネット配信ドラマとするべく力を注いだ。
何しろ有料なのだ。
子供向けに作られている玩具のCMであるTVシリーズとは違うものにするべく、設定もストーリーも高い年齢層を想定している。
製薬企業の実験失敗の結果、バイオハザードが発生し、<アマゾン>が世間に解き放たれ、なかには人肉食をするアマゾンもいる、というあたりはTV版ではもちろん出来ない描写を目指したものだ。

ヒーローもの映画もしくはドラマは、本来被りものの正義の味方と着ぐるみの悪玉がくんつほぐれつするものだ。
おおかたのヒーローはピチピチの服を着込んで顔は隠して、いかにも「悪でござい」といった姿の外観の悪玉と闘う。
みんな薄笑いしながら見るようなジャンルだった。

ところが、ティム・バートンがバットマンでアンチ・ヒーローを描いたり、クリストファー・ノーランがバットマンを『ダークナイト』3部作として撮ったり、マーヴェルもアイアンマンとかキャプテン・アメリカとかX-Menとか、ビッグバジェットを投入してシリアスな話をやって興行的な大成功を得たりして、雲行きが変わった。
それが受けたものだからなのだろう。
日本でも「大人向けの特撮」ぽいものが出てきた。

出てきた。確かに出てきた。

しかし、大人向けと言っているだけで、大人が見られるものになってない作品ばかりだ。大人を含む視聴者/観客の鑑賞に耐えるものとはとうてい言えない代物だった。

映画として作られた『キカイダー REBOOT』や『宇宙刑事ギャバン』などを見るといいと思う。
できれば前か後、『アベンジャーズ』や『X-MEN』を見ることをおすすめする。
落差という単語の意味を正しく知ることができると思う。
ついでに映画のプロデューサー、白倉伸一郎のインタビューを読むと、脳がクラクラしてくるのでおすすめしたい。
http://toyokeizai.net/articles/-/39193

『キカイダー REBOOT』や『宇宙刑事ギャバン』などが指し示すのは、日本のSF系映画製作環境の貧困さであり、人材と才能の不在である。
まともなシナリオもまともな演技ができる俳優もまともな映像表現もVFXもない。
そうはっきりわかる。
仮面ライダーとかスーパー戦隊もののレビューブログを読んでいると、<東映特撮のお約束事>というか暗黙の了解と言うべきものがあって、それらは作品を理解し受容するための前提らしい。
たとえば、それは仮面ライダーが変身(というか平成になってからは戦闘用のスーツ装着)の間、敵の人員は突っ立ってそれを見ているだとか、物理法則はハナっから無視して映像が組み立てられるだとか、派手派手しい戦闘や爆破シーンがあったとしても、強いダメージにはならないだとか、敵に捕らえられてもさっと逃げることができるだとか、敵に遭遇したのは街中でも、戦うシーンになるといつの間にか人気のない採石場のような荒地などに移動しているだとか、そう言ったものだ。
これが山のようにある。

大人向けの『キカイダー REBOOT』や『宇宙刑事ギャバン』でも、<お約束事>はある。
世界の存亡をかけた戦いというのが、着ぐるみ同士が延々殴り合いしてるだけだとか、そうなってしまうのだ。
<お約束事>でもって説明を省くという面もあるし、ヒーローが大声でなにか叫んで変身するというのは、歌舞伎の十八番みたいなものでもあるかもしれない。
もちろん、日本映画ではありがちな、「画ではなく、台詞で説明する」も健在だ。

<お約束事>など知らない人が観ても、面白いものになるか。
ならない。
観ても、<お約束事>に疑問をいだいたり、考えこんだり呆れたりする。
予算がないばかりか、シナリオのひどさに気づき、精神的にも貧困としか言いようがない描写に深く失望する。
そうして、ごく一般的な、映画を観に来た人は、離れてゆく。
それが興行的な数字に現れてるし、レンタルDVD屋に行っても置いてある本数は限られている。




第1話冒頭。

強い雨が降るシーンから始まるが、晴天の日に雨を降らせ、映像処理で厚い雲に覆われて暗くなっているように見せかけている。しかし、太陽が照りつけているのがバレバレなところにまずがっかりした。
おそらくは撮影日の余裕がなかったんだろうけど、こういうのは妙に気になってしまって作品世界に没入できない。
害虫駆除の偽装をしている傭兵部隊は、雇い主に重要と思えるようなことを無線で質問していて、しかもそれをごく簡単に盗聴されてしまっている。
それには気づかない。
味方がやられても、目の前で仮面ライダーアマゾンが変身しても、ボーッと突っ立っているだけ。
内容から言ったら、粘液がぬらぬらするクリーチャーの登場、血と肉の飛散するような描写を期待していた。
しかし、仮面ライダーアマゾンはテレビの平成仮面ライダーと同じような、樹脂製のおもちゃみたいなものだった。 アマゾンは肉体が変化するライダーだったはず。 しかし、肉体が変形する描写はなかった。期待していた、粘液に塗れた描写はなかった。着ぐるみが戯れていた。


オススメの鑑賞法はアクションシーンでは、音を消して見ること。
このドラマの質がよく理解できるはずだ。 着ぐるみの戯れをどう判断するか。 それがこのドラマを楽しめるか楽しめないかの分水嶺だ。

楽しんでくれ。

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