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2013/09/03

宇宙戦艦ヤマト2199を楽しむ

「宇宙戦艦ヤマト2199」の劇場でのイベント上映も、最終章である第7章を迎えた。惜しまれつつ、上映を終えようとしている。
テレビでの放映も、2013年9月いっぱいで終わる。

ファンも様々だ。
丹念に見て罵倒するという、暗い情熱を燃やすファンも少なからずいるらしい。ほかに楽しみはないのか、と思う。

ネットを検索して見ると、ヤマト2199の楽しみ方も様々なようだ。



かような危険球を投げて楽しんでいる人がいたりする。

http://matome.naver.jp/odai/2137171482780864001

「宇宙戦艦ヤマト2199」に松本零士の名はないものの、スタッフが充分な敬意を払いながら制作していることは作品の随所に感じられる、と他のエントリーに書いた。
なにしろ、松本零士の描いたヤマトスピンオフ作品とでもいうべき「永遠のジュラ編」を取り入れたりしているくらいだから。
「敬して遠ざける」というやつだ。
意味を辞書で調べると、「尊敬の気持ちから、なれなれしくしない」「尊敬するように見せかけて、内心はうとんじる。敬遠する」というふたつの意味がある。
「宇宙戦艦ヤマト2199」のスタッフからは、その両方の態度が感じられると思う。
最初のTVシリーズ「宇宙戦艦ヤマト」に息づく松本零士の意欲とアイデアと画作りには敬意を表する。しかし、ある時期以降の松本零士には戸惑いを覚える。著作権裁判でのゴタゴタ、さらには「新宇宙戦艦ヤマト」「大YAMATO零号」を見るに、あまり近寄らないでいようという気持ちになるのは致し方ないのではないか。
 気がつけば、松本零士は「宇宙戦艦ヤマト」のタブーになってしまった。

そんな中、サラリーマンにして漫画家、手塚治虫のタッチでゲスなエロ漫画をものしている田中圭一先生が、おそろしいパロディを放った。
 「宇宙戦艦ヤマト2199」の登場人物を松本零士タッチにするという無謀な試みである。
松本零士の執筆活動が脂が乗っていた時期のタッチを再現しているのが心憎い。





「銀河鉄道999 エターナル編」などを読むに、近年の松本零士の漫画は画力の衰えが顕著だ。悲しいことだ。ハヤカワ文庫SFで、挿絵を描いていた頃の流麗なタッチはすでに喪われてしまった。

田中圭一先生は、コミケットに「薄い本」を出したのだという。
これ、松本零士ご本人に知られていないんだろうか?いささか心配になる。こういうものを笑い飛ばす人であってほしい。

個人的に、水島新司タッチの真田さんが気に入った。
キャラクターによく合っているような気がする。

そう言えば、ひおあきらタッチの「宇宙戦艦ヤマト2199」描いてくれないものか。
いや、ひおあきら先生にコミカライズしてほしい。




『宇宙戦艦ヤマト』旧作と2199の比較 設定変更箇所など (制作中・・・)
http://matome.naver.jp/odai/2135852842159277901

これは、「宇宙戦艦ヤマト2199」ファンの方が旧作との違いを丁寧に検証したまとめである。こちらも楽しく読ませていただいた。
「宇宙戦艦ヤマト2199」が、出渕裕総監督以下、ヤマトに敬意を持つファンたちがスタッフとなって旧作の瑕疵をしっかりと踏まえ、丹念に創作しなおした作品だということがはっきりと分かるのではないだろうか。
具体的には盛り込まれたエピソード、設定が増えた。結果、物語の情報量が大幅に増えていることにも気づく。旧作の矛盾や描写不足を修正していくだけでなく、物語そのものも結果的に変更された。古代進を主役にすることをやめ、群像劇へとシフトしたのも情報量増大に適応したものだ。
「宇宙戦艦ヤマト2199」の制作とは、1974年の作品を2012年/2013年に視聴に耐えうる作品として描き直すことだった。単なるレトロスペクティブな作品としなかったところは良い選択だった。スタッフの掲げた目標は、旧作のファンを喜ばせるだけでなく、新しいファンの獲得を目指すということだった。

 総監督の出渕裕さん、チーフメカニカルディレクターの西井正典さんなど関わったスタッフにお聞きすると「旧作のヤマトファンが喜ぶだけでなく、新しいヤ マトファンの開拓」を心がけたそうです。実は過去の名作のリメークってあまり成功例がないんですよ。完全に新しいものにしてしまうと旧作のファンはまった く見向きもせず、逆に旧作のファンだけをターゲットにしようとすると、新規のファンはつかめない。「宇宙戦艦ヤマト2199」は、旧作のファンが見てもひきつけられ、新たなファンも獲得している。新旧が絶妙なバランスを保ってできている作品だと思います。
http://mantan-web.jp/2013/08/31/20130830dog00m200053000c.html

実写・アニメを問わず、失敗したリメイク作品を思い返すと、単なる書換えだったりして時代にそぐわないものだったり、新しい物語として書き換えた結果が退屈なものに終わったものだったりする。設定をやたら難しくしたのに、その回収もうまくできず、まったくおもしろくないお話になったものもあった。

上述のまとめを見ると、旧作が丹念に描き直されているのがよくわかる。時代にそぐわないエピソードや設定を捨て、新たなエピソードを盛り込む。
結果、情報量が増大し、尺はほぼ同じながら、早いテンポで物語が語られていった。このテンポが多くの人には受け入れられたのだ。
ただし、「宇宙戦艦ヤマト2199」のテンポが合わないとか、「間も、情感も失われた」というような指摘する人がいることは当然だと思う。
映像を「読む力」には個人差があるので。

まとめを見ていくと、旧作にあった<未知なる宇宙を探検する>という50年代の宇宙ものSFの風味を再現している作品であると、改めて気づく。
各エピソードのタイトルからして、往年の名作SFから採られたものだ。
そういえば、最初の「宇宙戦艦ヤマト」は宇宙ものSF、とくにスペースオペラのファンに熱狂的に受け入れられたものだった。
出渕裕総監督も、かつてそうだったのだと思う。


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