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2013/08/13

ヤマト2199は「さらば宇宙戦艦ヤマト」に接続しない

「さらば宇宙戦艦ヤマト」について書こう。

「さらば宇宙戦艦ヤマト」は封切りの前の晩から徹夜で並んで見た。
今はもうなくなった「渋谷パンテオン」の前だった。夜10時頃には、200人くらいは並んでいたかもしれない。夜中に、白いスーツ姿の西崎義展が大きなクルマで乗り付け、頭を下げる。何人かのファンたちと握手をし、去って行った。
朝6時頃だったか、始発でやって来た人たちが駅からどっとやって来た。ドタドタ走ってきた子供が、車に轢かれそうになったのを見た。
あまりに人が並んだので、たしか朝8時から上映を開始したと記憶している。予告編はなく、いきなり本編が上映された。
一緒に行った友人がそわそわしていた。


「さらば宇宙戦艦ヤマト」の上映が始まった。
冒頭の荘厳な「白色彗星のテーマ」には、ぐっと引きこまれた。

しかし、佐渡酒造先生が沖田十三の銅像の足元で地球の繁栄を嘆くシーンで首を傾げた。
「さらば宇宙戦艦ヤマト」で描かれる世界は、ヤマトがイスカンダルから放射能除去装置「コスモクリーナー」を持ち帰ってから1年後の西暦2201年。わずか1年で地球は復興したばかりか繁栄を取り戻し、「ヤマト」のことも忘れてしまったという。
わずか1年で復興して繁栄?
それはさすがに無理じゃないか。
干上がった海も、焼けてしまった森林もわずか1年で戻っただって?
1年経ったら人類は繁栄に酔いしれて、ガミラスに侵略されていた苦衷を忘れてしまった?

「宇宙戦艦ヤマト」TVシリーズに続いて、古代進という人物の描写はメチャクチャ。白色彗星と闘う葛藤も成長もないとっ散らかった人物のまま、特攻して死ぬ。

ストーリーはどうか。
アイデアが過剰に盛り込まれているが、それはまるで整理されていない。ブレストで出たアイデアは何でもかんでも突っ込んだかの印象。
徹夜で疲れたのか友人は始まって1時間くらい経った頃には寝息を立てていた。
2時間半の上映時間中1時間以上が戦闘シーン。アイデアをうまく見せることも、人物の深みを見せることもなくストーリーは進み、後半の破壊の連続へなだれ込む。
ところどころ、作画が雑になり、ときおり動きが怪しくなり、ゴミやホコリが目立った。

で、主だった登場人物が次々に死んでいくパートに差しかかる。
何だ、これは?
と私は渋面を作りながら見ていた。





「宇宙戦艦ヤマト」TVシリーズで、沖田十三は「死ぬな」と言い続けた。
それが簡単にひっくり返され、どんどん人が死ぬ。
知恵を振り絞った戦いはない。
敵の攻撃の前に、なすすべもなく登場人物が死んでいくばかりだ。
周囲からはすすり泣きや嗚咽の声が聞こえていた。
寝ていた友人もいつの間にか起きて、うっうっと嗚咽を漏らしながら泣いていた。

で、古代進が特攻する理由についてながながと御託を並べる。その間、ガトランティスの超巨大戦艦は攻撃の手を休めている。
で、特攻しておしまい。

上映が終わった。周囲の人間たちは泣いたためか、みんな目が赤い。
何人か、私と同じように首を傾げる姿も見たように思う。

話としては面白くなかった。
「宇宙戦艦ヤマト」第1シリーズの良い点は、「知恵と勇気」でピンチを脱する、沖田十三以下、ヤマト乗組員の活躍ではなかったか。
一方で「さらば宇宙戦艦ヤマト」はストーリーらしいものはあまりなく、突っ込んでくる白色彗星帝国を止める手段がないので特攻しました、おしまい。そんな貧弱な話なのだ。
貧弱なお話に、特攻についての美辞麗句がまぶされていて、そっちに気を取られているうちに映画は終わる。

面白くない映画。知恵も工夫もない映画。
それが感想だ。今に至るもそれは変わってはいない。

「宇宙戦艦ヤマト2199」のファンの中から、続編を要望する声があがっている。あの出来の良さだ、その気持ちはわかる。
仮にリメイクが作られるとする。としても、「宇宙戦艦ヤマト2199」の世界に「さらば宇宙戦艦ヤマト」は接続しないし、できない。
「2199」世界にあって、ガトランティスとはガミラスと戦っているものの、劣勢な「周辺の蛮族」である。巨大な彗星帝国で持って宇宙を侵略する強大な存在ではない。
続編があるとしたら、旧作の愚にもつかない続編群とはまったく異なる物語が語られることになるはずだ。



13 件のコメント:

  1.  初めまして。Corkey.Oと申します。
     「ヤマト2199」をヤフーで検索していて、このブログに行き当たりました。勝手な思い込みかも知れませんが、ブログ主様は僕と同じ昭和30年代(それも始めの方)生まれとお見かけいたしましたが、いかがでしょうか?そうである事を勝手な前提としてコメントいたします事をお許し下さいm(_ _)m
     正直言って最初にこの「ヤマト2199」の企画を聞いた時には「もういい加減勘弁してやれよ(^_^;)」と思いました。最初の放映で、SFファンとして海外作を見る度に切歯扼腕していたのが、これで(将来的に、ですが)海外のSFファンにも伍して戦える道が開けたと小躍りしたものです。
     それが「ヤマト2」以来のグズグズで最後には「ヤマト=嘲笑」にまで堕ちてゆく過程をリアルタイムで経験したものの一人として、「またかよ」の思いがあまりに強かったです。
     未だにアホ毛/巨乳の同人誌系の絵には馴染めませんが、作品全体としては「やっぱり出渕裕は伊達じゃない」と感心し直しました。
     僕は実写版ヤマトを「最初の放映からの最期の落とし前」としての「ヤマトファンによる、ヤマトファンための、ヤマトファンの映画」として高く評価しているのですが、「2199」はある意味でこれとはまったく異なるベクトルで作られていると現在は評価しています(旧来のヤマトファンはあくまで大勢の中の一人に過ぎない、という位置付けと思います)。
     そういう意味ではリブートされた新たなコンテンツとして、どうせ続編を作るならば旧作を一まとめにして歴史のゴミ箱に放り込むくらいの事をして欲しいと思っています。
     長くなりましたが、ブログ主様は実写版ヤマトはどうご評価されていますか?

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    1. 渋谷パンテオン前に徹夜で並んだというくだりを読めば、私の年齢は少なくとも10代ではないとご理解いただけるものと思います(笑
      実写版「SPACE BATTLESHIP ヤマト」、好きな作品です。ご指摘のようにヤマトファンによるヤマト映画であると思います。木村拓哉、柳葉敏郎はじめ、キャストの演技からはヤマトへの敬意と愛情が感じられました。「宇宙戦艦ヤマト」の美点をしっかりと取り入れている映画です。
      この映画については、新しく投稿するつもりです。

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    2.  返信ありがとうございましたm(_ _)m
       僕は実家が札幌だったこともあって映画館の前で徹夜で並ぶということはしませんでしたが、丁度親や年長の兄弟から「いつまでもアニメなんか見て」と言われる年頃でヤマトに出くわしました。
       結局「見たい」という自分の気持ちに正直になる決意をし、その結果として「いい歳をしてアニメを見ている」と揶揄されるのを甘受する事を覚悟しました(まあ「居直った」とも言えます(^^ゞ)
       それゆえに僕は「オタク」と呼ばれることになる者達の一期生であると自認しており、「ヤマト」はそうした者達を峻別するリトマス試験紙だったと思います(「オタク」の語源についてもリアルタイムで経験しています)。

       「SPACE BATTLESHIP ヤマト」に対する記事を楽しみにしております(^_^)

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    3. こんばんわGONといいます。
      あれ?だいぶ前に2199の続編にさらばの制作は決定しているとネットニュースにも書いてありましたよ。
      公式にはまだ発表はないようですが、このような記事が出るということは制作の意思はあるということで
      はないでしょうか。

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    4. 続編ですか?
      エイプリールフール記事と、ファンが作ったニセ予告編は知っていますが、それ以外にどこかでニュースが出たのでしょうか。

      宇宙戦艦ヤマト2199続編製作決定!新作は劇場版!!
      http://yamato2199.jp/aprilf122.htm

      宇宙戦艦ヤマト2201 「白色彗星帝国篇」
      http://www.youtube.com/watch?v=BKqawJeCVls

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  2. こんばんわ GONです。

    >どこかでニュースが出たのでしょうか。
    失礼しました。それかもしれません。
    確かに調べてみたら公式には発表はされていませんし出渕総監督も続編は否定はしてますね。

    ただ2199には土方艦長とか白色彗星帝国のガトランティスもでていて、さらばへの伏線
    はしっかり敷かれているような感じもあり作る可能性は高い気もします。
    出渕総監督が作らないと言ってもヤマトは出渕総さんの作品ではありませんし他の
    監督での制作される可能性もあるのではないかと思います。
    ハリウッド作品では同じシリーズで監督が替わるなんて珍しい事ではないですしね。
    出渕総さん自体監督としての経験も浅い人ですので他にもっとふさわしい監督もいるので
    はないかと思っています。

    個人的には2199は全体的な出来は悪くはなかったと思いますが話の中で私の感想で
    改悪と思われる部分も少なからずあったと思いますので仮にさらばを作るとしても出渕総
    さんが監督でなくてもいいと思っています。

    2199は西崎離れのヤマトと言われてますが2199の制作が決定されたときにはまだ西崎さん
    は生きておられたということですね。
    もし続編が作られるとすれば今度が本当の意味での西崎離れのヤマトといえるのではない
    かと思います。

    長々と失礼しました。

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    1. こんばんわ GONです

      第七章の新宿ピカデリーでの初日舞台挨拶で島大介役の鈴村健一さん出渕裕監督
      から次回作への期待を匂わせる発言がありました。というかもう作ると言っている
      発言だと思います。
      http://news.mynavi.jp/news/2013/08/25/082/

      エイプリールフールの日ではないのでたぶ間違いはないと思います。

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    2. 「宇宙戦艦ヤマト2199」は商業的には見事に成功した作品だと思います。
      となれば、続編の声はあがるんでしょうね。
      「宇宙戦艦ヤマト2199」の正統的な続編はあの作品世界を考えると難しい気がします。もし作られるなら、「さらば宇宙戦艦ヤマト」以降をなぞらない、まったく新しいお話が見たいです。

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    3. bobbieさん こんばんわ GONです。

      実は私も続編を期待しているものの、さらば宇宙戦艦ヤマトはヘタに弄って欲しく
      無いという気持ちも一方であります。
      さらば宇宙戦艦ヤマトはあれはあれで一つの完成された作品だと思いますので
      ヘタに弄ると作品自体を台無しにしてしまうのではないかと思うからです。
      一から作る新しいお話も難しそうですね。

      まあいずれにしても続編作れば見ると思いますが^^

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  3. 「宇宙戦艦ヤマト」以前の「ヤマト」にも書いたAizengaldです。
    6日のヤマトークにおいて出渕さんと西井さんの会話の中で、「ガトランティス艦は手書きで作ったが、今はCGにしておけばと後悔している」との会話がありました。ゲームなのか、外伝なのか、はたまた続編なのかはわかりませんが、ガトランティス艦の再度の出番はありそうな感じです。個人的にはもう少し大人になった古代たちによる、ガトランティス編は見てみたいと思っているのですが、どうなりますやら。まあでも30年くらいは待てたわけですから、もう少し待つくらいどうってこともないですよね。

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  4. 最後のほうで2199がエヴァぽくなったのが気になりましたが、続編でさらにそれが加速しないことを祈ります。

    「さらば」の玉砕のありようも、あれはあれで人の驕りをテーマとしていましたから、さりとてはの作品だったと思います。

    2199で誰がみても続編への伏線と思わせる表現をまとめると、なんとなく次回作もテロン人の驕りがフィーチャーされるような気がします。

    それはさておき、私がもっとも楽しみなのはCG化されたアンドロメダです。

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    1. 投稿ありがとうございます。

      > 最後のほうで2199がエヴァぽくなったのが気になりましたが、続編でさらにそれが加速しないことを祈ります。
      これは、アニメのパラダイムが決定的に違ってしまったので致し方ない部分もあると考えます。「宇宙戦艦ヤマト」旧TVシリーズのような<大いなる救済の物語><大宇宙のロマン>ではなく、<個>に根ざした、<ワタシが救われたら、世界も救済される>という物語構造へのシフトですね。

      「宇宙戦艦ヤマト2199」の新作映画がアナウンスされましたが、はたして続編はあるのでしょうか。

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  5. さらば宇宙戦艦ヤマトは一番素晴らしい作品だと思うんだけどな・・・
    なんていうか、多大なる犠牲の上に平和が成り立っていること、命を懸けて守らねばならないものがあること、などを描きたかったんだと思うんだけどな。
    さらばが公開されたのが僕が小学校5年生の時、その時は、白色彗星、アンドロメダ、拡散波動砲、拡散波動砲の一斉射撃、超巨大戦艦にばかり目が行っていましたが、二十歳を過ぎて改めてこの作品を見た時には、号泣しましたけど・・・。
    雪がミルに撃たれヤマトの病室で言ったセリフ 『帰りたい、帰ってあなたと一緒に二人だけのおうちで、あなたと・・・』などは、今見てもうるうるします。
    まあ、感じ方などは人それぞれなので意見も違うと思うのですが、なんとなくこの記事を拝見していて、そうは思いませんでしたか?と言いたくなっただけでしたw^^

    2199星巡る方舟の次も是非やってもらいたいですね!
    さらば でも 2以降でも。
    それは一致してますよね?w

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