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2015/01/13

消え行く松本零士とハーロックとまほろば


2014年の松本零士先生の一コマである。
国民的な人気のお妃様の隣がよっぽど気持ちよかったんだろうか。

ああ、やはり過去形で語られるべき人なんだな、と思った。


キャプテンハーロック



松本零士はアニメに手を染めるというか、くちばしを突っ込むようになって、漫画家としては終わってしまった人だ。
アニメ化作品の莫大な版権収入を手にしてカリカリとペンを走らせる行為がバカバカしくなったのだろうか、かれのマンガからは丁寧さも繊細さもどんどんなくなってしまい、無残に荒れていった。





かつて、松本零士は短編マンガで冴えを見せる漫画家だった。

『セクサロイド』『男おいどん』『戦場まんがシリーズ』『銀河鉄道999』といった作品はいずれも長編ではなく、短編連作だった。
短編ながらもよく練られた、おもしろい作品が多かった。短編に力を発揮するタイプの漫画家だったと思う。

セクサロイド(1)


漫画家としては、『宇宙戦艦ヤマト』が分岐点だった。
アニメのコミカライズ作品だったが、これが回を追うごとにひどい手抜きになっていった。続く漫画も荒れていったのだ。


アニメが、松本零士にあり余るカネと「アニメの巨匠」などと称するような虚名をもたらした。
松本零士の名前がクレジットされたアニメ作品を挙げてみる。

テレビアニメ

    宇宙戦艦ヤマト(1974年)
    宇宙戦艦ヤマト2(1978年)
    宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち(1979年)
    宇宙戦艦ヤマトIII(1980年)
    惑星ロボ ダンガードA(1977年)
    SF西遊記スタージンガー(1978年)
    SF西遊記スタージンガーII(1979年)
    宇宙海賊キャプテンハーロック(1978年)
    銀河鉄道999(1978年)    マリンスノーの伝説(1980年)
    メーテルリンクの青い鳥 チルチルミチルの冒険旅行(1980年)
    新竹取物語 1000年女王(1981年)
    わが青春のアルカディア 無限軌道SSX(1982年)
    コスモウォーリアー零(2001年)
    ガンフロンティア(2002年)
    SPACE PIRATE CAPTAIN HERLOCK(2003年)
    SUBMARINE SUPER 99(2003年)- 『潜水艦スーパー99』のアニメ化
    銀河鉄道物語(2003年) 画業50周年記念作品
    宇宙交響詩メーテル 銀河鉄道999外伝(2004年)
    銀河鉄道物語 〜永遠への分岐点〜(2006年)
    松本零士「オズマ」(2012年)

映画

    宇宙戦艦ヤマト(1977年)
    さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち(1978年)
    ヤマトよ永遠に(1980年)
    宇宙戦艦ヤマト 完結編(1983年)
    惑星ロボ ダンガードA対昆虫ロボット軍団(1977年)
    惑星ロボ ダンガードA 宇宙大海戦(1978年)
    宇宙海賊キャプテンハーロック アルカディア号の謎(1978年)
    銀河鉄道999〜GALAXY EXPRESS 999〜(1979年)
    銀河鉄道999 ガラスのクレア(1980年)
    さよなら銀河鉄道999 アンドロメダ終着駅(1981年)
    銀河鉄道999 エターナルファンタジー(1998年)
    1000年女王(1982年)
    わが青春のアルカディア(1982年)
    インターステラ5555(2003年)
    元祖大四畳半大物語(1980年) - 実写作品
    キャプテンハーロック -SPACE PIRATE CAPTAIN HARLOCK-(2013年)

OVA

    YAMATO2520
    ザ・コクピット(1994年)
    クイーン・エメラルダス(1998年)
    火聖旅団 ダナサイト999.9(1998年)
    ハーロック・サーガ ニーベルングの指環 ラインの黄金(1999年)
    メーテルレジェンド(2000年)
    ヤングハーロックを追え! コスモウォーリアー零外伝(2001年)
    大ヤマト零号(2004年)
    銀河鉄道物語 〜忘れられた時の惑星〜
銀河鉄道物語〜忘れられた時の惑星〜 劇場版 Blu-ray
時系列で見てみると面白い。

劇場版『宇宙戦艦ヤマト』のヒットと1978年の『さらば宇宙戦艦ヤマト』の大ヒットの結果、マイナーでマニアックな漫画家だった松本零士の名は売れるシンボルとなった。
TVアニメや映画が次々登場した。
しかし、その威光は4年ほどで消えたのがわかる。
名は売れたが、「実」は伴っていなかった。
アニメや映画の製作者、おもちゃ屋に出版社、みんな「松本零士」というラベルをほしがっただけで、内容の伴わない薄っぺらいものを「松本ロマン」などと名づけて売りだした。
だから虚名なのだ。
80年代の劇場用アニメでは『銀河鉄道999』以外の作品は過去のものとなっている。
『銀河鉄道999』への評価は、監督のりんたろう、脚本の石森史郎、作画監督の小松原一男、美術監督の椋尾篁の仕事に向けられたものだ。そして、「監修」とクレジットされた市川崑の素晴らしい編集のテクニックにも。

2013年、『キャプテンハーロック』がフル3DCGアニメとして映画になったことを知らない人も多いのではないだろうか。アニメの老舗東映アニメーションが5年の歳月と総製作費3000万ドルをかけて作った超大作という触れ込みだった。
小栗旬、三浦春馬、蒼井優、古田新太といった俳優が声優としてキャスティングされ、テレビ特番をオンエアするなど、プロモーションにも力が入っていた。
だが、俳優を声優に起用することは一般のひとびとの作品に対する関心を呼び起こすことはなかった。
昔のテレビアニメ版『宇宙海賊キャプテンハーロック』のファンの強い反発を呼び起こしただけだった。
『キャプテンハーロック』は2013年6月に華々しく公開されたものの、興業的に悲惨なものに終わり、DVD/Blu-rayも売れずに収束してしまった。
作品の出来がいいとか悪いとか、その内容を語るものもほとんどいない。
結果として、『キャプテンハーロック』は「なかったこと」になってしまった空気がある。
『キャプテンハーロック』の興業的な惨敗とは、「松本零士という名前はオカネを産まない」という事実を再確認するものだった。
この映画の企画者も出資者もリサーチ能力が決定的に欠けていたのではなかったか。

一方、著作権裁判の結果を経て、松本零士の名前がクレジットから消えた『宇宙戦艦ヤマト2199』は、DVD/Blu-rayはじめグッズがよく売れ、新作の映画まで制作されるなど、ビジネス面でたいへんな大成功を収めている。
松本零士が関与していない作品に松本零士的なものが息づいていているのが皮肉だ。


荻野
お忙しいところお時間いただいて本当に申し訳ございませんでした。
でも、せっかくいただいたお時間なので、色々と質問させてください。
TVアニメーションシリーズ『宇宙戦艦ヤマト2199』についてどう感じておりますか?
松本先生
私は今回の作品についてはタッチしていないので、作品自体に対するコメントはあまりしたくありません。
ただ、今後アニメ制作の話が出るのであれば必ず、私が関与して作品のクォリティーを上げたいですね。

突撃インタビュー第一弾「松本零士先生」

言葉が少ないので断言はできないけれども、松本零士は『宇宙戦艦ヤマト2199』は目にしていたようだ。
悪罵の言葉がないことからすると、制作スタッフが仁義を切ったのは何となく想像できる。

荻野
松本先生は沢山の成功作品を生み出していますが、先生が作品を創るうえで、一番意識していること、ポリシーはどんなことですか?
松本先生
作品を創るにあたり、私の信念としては、どの国も名誉と国が滅びるようなストーリーで、国の威厳を傷つけてはいけないということ。尊厳をまもり「夢」を創出するということです。
荻野
例えば具体的にどのようなシーンにそれは象徴されていますか?
松本先生
作品の中の「言葉(台詞)」、ストーリーは、より真実に近くなくてはいけないと考えている。脚本を書くにあたり、より歴史を理解し、戦闘シーンであればよりリアルな表現にするために「命令伝達様式」「戦闘ルール」を理解した台詞でなくてはいけない。
これを怠り、表面的な絵図ら(※ママ)を追いかけていくと、どうしても作品自体が軽いものになってしまい、見る人が見ればうすっぺらい作品だとわかってしまう。
そういう作品は、はっきり言って創りたくないし、私の作品ではない。
私が創る作品は、多少時間がかかったとしてもより「真実に近く」「誰もが納得する」そんな作品を創らなければいけないと意識しています。

「私の信念としては、どの国も名誉と国が滅びるようなストーリーで、国の威厳を傷つけてはいけないということ」というのはとても良い。
とくに、歴史修正主義者が書いた特攻隊賛美小説がバカ売れし、映画化したら大当たりするというひどい状況のなか、こういう意見は尊重されるべきだ。
そういう発言をする、松本零士の名を冠した『Cosmo Super Dreadnought まほろば -超時空戦艦-』は出てこないのだろうか。

『Cosmo Super Dreadnought まほろば -超時空戦艦-』というアニメ映画は2013年に公開される予定だったはずだった。

もちろん、そんな映画は公開されていない。
2013年は終わり、2014年も過ぎて2015年になったが、この映画に関するニュースはいっさい聞こえてこない。

製作が発表された映画が公開されない、公開が延期になる、結局のところ製作されなかった。そういうニュースは何度か目にしたことはある。
『Cosmo Super Dreadnought まほろば -超時空戦艦-』も消えた映画になってしまったのだろうか。
それとも、きわめて厳しい箝口令が敷かれていて、情報のアウトプットも抑えられていて、それがうまく行っているのだろうか。密かに制作が進行しているのだろうか。

『Cosmo Super Dreadnought まほろば -超時空戦艦-』は、いつか、華々しく公開される日が来るのだろうか。

それとも、松本零士の名を冠した映画は『キャプテンハーロック』が最後になるのだろうか。


宇宙戦艦ヤマト2199 追憶の航海 [Blu-ray]


<松本零士的なもの>は、『宇宙戦艦ヤマト2199』に息づいている。
名前はクレジットされていないが、息づいてる。

3 件のコメント:

  1. メガネが外れているのは手元を見る為であって寝ているわけではありません。

    ありませんが、その画像がほとんど回らず、このように松本零士を腐すためにメガネが外れてあたかも寝ているかのように誤解させるために使われているという現状は、氏のファンとしては哀しい限りです。

    もっとも、筆者が単純にこの画像のみしか知らず、知らないがためにこのように書いたのであればそれはもう「知らなかったのだから仕方がない」で済ませるよりほかにないとも思う。

    それはそれとして、アニメや映画はもう出さなくていいので新作漫画を1ページでも多く描いて欲しいというのが本音である。
    松本零士は漫画家なのだから、アニメはアニメ屋に任せて漫画を描いて欲しいと思う。

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    1. ははあ、ほかの写真もあるんですか。そうですか。

      松本零士先生を追っていれば、老いた結果としての行動や発言ばかりが目立つ気がしますね。

      > それはそれとして、アニメや映画はもう出さなくていいので新作漫画を1ページでも多く描いて欲しいというのが本音である。
      松本零士は漫画家なのだから、アニメはアニメ屋に任せて漫画を描いて欲しいと思う。

      無理だと思います。
      アニメに手を付けてカネと虚名は手に入れましたが、かれは漫画家としての魂をとうの昔に喪失しているんじゃないでしょうか。

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  2. 松本零士が変に2199に口ばしを挟んでいたら悲惨なものになっていたでしょうね。
    大YAMATO零号の内容でクォリティを上げるなどとよく言えたものだと思います。

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